何故か平目
平目の旬は、冬です。今とは正反対の時季にあたります。その時季の平目を指して、“寒平目”ということもあります。
「夏の平目は猫またぎ」と言葉もありますが、冬場に比べて劣るというだけで、夏場でも十分美味しい魚です。
ですから、“佳肴 季凛”では、この時季でも使います。特に、1キロ以下の平目は“ソゲ”と呼ばれ、ここ最近仕入れているのは、この“ソゲ”です。
本音を言えば、他の魚を使いたいのですが、平目を使うのには、幾つか訳があるのです。
平目以外の魚で、これといった入荷がないこともその理由です。あっても、大きさ、質がイマイチだったり、値段的にもあわないからです。
話しは逸れますが、お客様の中には、値段に関係なく、良いものを仕入れてくるのが、志村スタイルと思われている方もいらっしゃるようですが、いくらなんでも、そこまで出来ません。時には、目も当てられない仕入れをすることもあるのですが・・・。そんなお話しは、こちらを。
“佳肴 季凛”の水槽です。見づらいかもしれませんが、平目が二枚ほど入っています。今朝もここから、一枚出して、卸しました。
これを締めてから、神経を抜きます。こうすることで、死後硬直が遅れるので、身持ちが良くなります。これについては、以前お話ししたことがあります。
神経を抜いている様子です。
平目を仕入れるもう一つの理由ですが、平目はご存知のように、海底にいて、あまり動き回ることがありません。この習性は、水槽に入れても、変わりません。
ですから、今日のように、市場が休みの日は、前の日に仕入れて、水槽に入れておきます。動き周ることもないので、身がすれたり、最悪の場合、あがる(死んでしまう)こともありません。実際、あがったのは、ここ半年で一回だけです。
また、この水曜日、木曜日のように、天気が悪く、魚の入荷が少ないことが予想されるような時は、余分に仕入れることもあります。今日卸したのは、木曜日の平目です。
多少仕入れ値は高くても、安全性が高い魚でもあるのです。
ちなみに、鯛や鱸(すずき)などは、動き周るので、体がすれてしまったり、市場から帰ってくる間に、プカプカしてしまうこともあります。ですから、これらを使う時は、仕入れてた日に卸すようにしています。
活かしておくので、今日のように市場が休みの日でも、薄造りでお出しすることも出来ます。
昨日、卸したものは、やや厚めに引き、刺身としてお出ししています。一日寝かしたほうが、身には程よく、歯ごたえが残り、平目特有の旨味を味わえます。
ところで、この二つの作り身を見比べて見て下さい。
向こう側が刺身で、手前が薄造りです。厚さは分かりにくいかと思いますが、薄造りのほうは、このように、伸びるのです。特に、卸したては、身が活きているので、すぐに縮んでしまいます。
「今が旬です!」とは言えませんが、「間違いなく、美味しい!」と自信を持って言えます。やはり、平目は白身の王道です。
志村
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