9,8キロの“ジャンボちゃん”こと、超特大とらふぐ(天然)は、富山県氷見産
今日は、
沼津の魚市場に、仕入れに行って来ました。構内を歩いていると、
静岡県由比産のふぐ類が、
色々と、入荷していました。
とらふぐをはじめ、
しまふぐ、さばふぐ(2本)、
しょうさいふぐ、
そして、最後の箱には、
しょうさいふぐとさばふぐ(1本)が、入っていました。これらは、全て天然ものです。
まるで、富山県氷見産の“ジャンボちゃん”こと、超特大とらふぐ(天然)が、
入荷し、これまでに、自分が仕入れたとらふぐの最大の記録を更新する前祝のような気がしてならず、昨日のお話しの最後の件は、このことでした。ちなみに、これまでの最高記録は、去年の3月に入荷した三重県熊野産の8,0キロのものです。
この“ジャンボちゃん”が入荷することが分かった以上、昨日から、萌え燃え・・・というよりも、MAX萌え燃え・・・の自分でしたが、それでも、市場に並んでいる色んなふぐを見た以上、当然素通り出来ず、
とらふぐをセリ落としてもらうことが、出来ました。他は、あえて強気に出なかったこともあり、セリ落としてもらうことは出来ませんでした。今日は、主役になれなくても、それでも天然のとらふぐですので、ウォーミングアップで、萌え燃え・・・
その後、
宮崎県産の岩牡蠣など、ひと通りの仕入れをし、魚市場から、帰ることにしました。
そして、帰り道に、
宅配便の営業所に立ち寄り、
この発泡スチロールを、
受け取り、『佳肴 季凛』に戻りました。
ただ、今日はお弁当を仕上げなくてはならなかったので、逸(はや)る気持ちを抑え、
お弁当を仕上げ、佐賀産の小肌などの仕込みを終え、中を開け、
“ジャンボちゃん”が、姿を現し、取り出すと、
身体中をアドレナリンが駆け巡ると、萌え燃え・・・
そして、
抱きしめると、その抱き心地は、得も言われぬもので、∞(無限大)で、萌え燃え・・・
魚市場で仕入れて来たものと、比べてみると、
これほどまでに、違いました。また、10キロ近くなるまでには、一説によれば、10年掛かるとも言われているだけでなく、天然のとらふぐの寿命が、10年とも言われているので、まさに長老で、このような“ジャンボちゃん”に巡り会えたことは、かなりの幸運だと言っても、過言ではないかもしれません。
最初にくちばしを切り落とすと、
その大きさは、野球のボールほどでした。
ここまでの大きさだと気になるのが、性別で、
メスで、このような真子(卵巣)が、出て来ました。ちなみに、“ジャンボちゃん”は、メスであることが殆どで、このことは、雌雄の成長の度合いに違いがあるからだとも、言われています。
真子は、猛毒ゆえ、食べることは出来ませんが、その大きさが気になったので、
秤に乗せると、
2,5キロ近くあり、全体重の4分の1ということになり、まさに、“泳ぐ生殖腺”としか、言い様がありません。
ここまで大きいと、同じく不可食部位の肝臓も、
然りで、
その目方は、
約1,2キロでした。この二つの内臓で、全体重の3分の1以上もあるというのは、驚くばかりです。卸し終えたら、
水洗いをし、胴体の部分も、
秤に乗せると、
2キロを、僅かに超える大きさでした。その後、
拭き上げ、胴体の長さを比べてみると、
一升瓶よりも、太くて、長さもありました。
さらに、
三枚に卸し、秤に乗せると、
片身で、800グラム弱で、もう片身も、
ほぼ同じ目方で、合計で、約1,5キロということになり、さらに、身皮と呼ばれる、皮を取り除くと、刺身にする部分になるのですが、その目方はもっと減ります。
約10キロあっても、刺身に出来る部分は、1割しかありません。このことは、とらふぐに限ったことではなく、他の魚も、程度の差こそあれ、刺身が、決して安いものではないのは、お分かり頂けると思います。
また、ふぐ料理自体が、安価なものではないことの理由でもあり、このことについては、以前お話ししたことがあります。
三枚に卸した身は、
身皮をつけたまま、晒にくるんで、冷蔵庫にしまうことにしました。晒にくるむのは、水分を取りぞくためで、こうしないと、美味しいふぐ刺に仕立てることが出来ないからです。
その後、
ふぐ皮の棘も取り終えました。また、ひれも、当然大きく、
今朝の由比産のものと比べると、
その違いは、
これまた、一目瞭然です。
かくして、記録更新が、出来たものの、願わくば、10キロ以上の“ジャンボちゃん”を仕入れ、抱きしめたいのですが、ここまでのものは、水揚げ自体も多くなく、いつになるか、全く分かりません。
それ以上に、多くの人に、天然のとらふぐの美味しさを、知って頂けるよう、努力と工夫をする姿勢を保ち、ふぐ料理に限ったことではなく、本物の美味しさを、伝えられるよう、精進し続けたいものです。
食用と廃棄部分を部位に計測され、貴重なトラフグに向き合う料理人の姿は、素晴らしいです。1kgの卵は約55万粒ですから、10キロフグの卵巣2.5Kは137万粒です。このフグは5月頃の産卵のため、能登半島輪島沖を産卵回遊していたことと推察します。私は25年前、鹿児島県東町でトラフグの採卵作業をしていました。当時の相場は1粒2円です。100万粒で200万円です。採卵用親魚1尾が15〜20万円/kgで取引されていました。今回、廃棄される卵巣から137万尾のふ化仔魚を得ることができます。自然界での生残率はわかりませんが、ジャンボふぐ10キロから刺身が1キロしかとれない貴重な知見から、食材を大切にし、命と向き合っている志村さんの料理人としての心をうれしく思います。
町田さん
たいへん御丁寧な説明そして、先日のメッセージを、ありがとうございます。
これで、ふぐの知識が増え、非常に嬉しい限りです。
今後とも、宜しくお願いします。