沼津初入港の千葉県の漁船
Vol.4130
いらっしゃいませ
基本に据えた
“身体に優しい美味しい日本料理”
を信条とし
天然のとらふぐ、西京漬(西京焼)を
こよなく愛す
【佳肴 季凛】の店主兼熱血料理人の
志村弘信です。
今日(8月30日)は
沼津初入港の千葉県の漁船について
お話しします。
今朝、沼津魚市場から戻って来ると
熱血君が
「おはよう、親方
今日は、オアカアジを仕入れ来たんだね。」
「そうだよ。」
「尻尾が赤いから
オアカアジなんだよね。」
「そうなんだけど
正式には
オアカムロ(尾赤鰘)っていうんだよ。」
「へぇ~、そうなんだぁ。」
「ついでに言うと
正式名のことを
標準和名っていうんだけど
沼津じゃ、オアカアジとか
オアカって呼んでいるね。」
「ふぅ~ん。
で、今日のオアカアジ
いつものより
デカくね?」
「大きいよ。
1キロあるからね。
普段、入荷しているサイズは
4~500グラムくらいかな。
3キロ入りで、6~7本ぐらいだからね。」
「ってことは、倍じゃん!」
「そういうことになるね。」
「たまたま、デカかったってこと?」
「っていうか
今日の尾赤鯵の漁場(ぎょば)が
南の方だったからだよ。」
※漁場とは、漁獲海域のことです。
「どういうこと?」
「じゃあ、話してあげるよ。」
「わぁ~い。」
ということで
時計の針を
市場時間に戻します。
今朝の5時前の沼津魚市場です。
秋の気配も感じられつつあるので
富士山もそれらしい雰囲気です。
そんな今朝
岸壁に泊まっていたのは
2隻の漁船。
左側が
勝浦
右側が
鴨川の漁船で
どちらも千葉県です。
これまでに
和歌山県、三重県、宮崎県などの
漁船を見たことがありますが
千葉県のものは初めてなので
売場の担当者に訊くと
初めてとのこと。
つまり、沼津デビュー
ということになります。
程なくすると
船から魚が揚げられて来ました。
揚げられたきたのは
標準和名ハマダイ(浜鯛)にして
ローカルネーム@沼津は
オナガダイ(尾長鯛)です。
普段
沼津で見るものよりも大きく
大きいものだと
7キロUP。
普段見るサイズは
2~5キロと様々で
MAX5キロが
いいところです。
また
アオダイ(青鯛)も
一般サイズ(0,5~1キロ)の
倍くらい。
葉血引(ハチビキ)の場合
沼津で水揚げされるもので
一番大きいところで
4~5キロですが
そのひと回り
大きい感じでした。
自分が仕入れた尾赤鯵は
これらではありませんが
それよりも大きいものもあり
約1,5キロにして
普通サイズの3倍。
そもそも、ここまでの3Lサイズが揃うのか
気になっていると
知り合いの漁師に訊いてみると
「漁場が島よりも
南だからだよ。」
漁師が開いているのは
海図
つまり、海の地図です
島より南・・・?
暗号のように聞こえるかもしれませんが
伊豆七島よりも南
という意味です
※伊豆七島は
①大島 ②三宅島 ③神津島 ④式根島
⑤利島 ⑥新島 ⑦御蔵島 です
「島よりも下(南)ってことは
小笠原の方?」
「そこまではいかないだろうけど・・・。」
「じゃあ、どれくらい?」
「300から400キロ
ってとこかなぁ。」
「あ゛~っ!?
ってことは
沼津から名古屋までじゃん!」
「そうだね。」
「で、どれくらいかかるの?」
「二昼夜。」
「え゛~っ
丸二日?」
「丸一日でも行けるけど
燃料がかかっちゃうから
そのスピードだな。」
「自分には無理だよ。」
「あはは・・・。」
「でさぁ、南の方は
そんなに大きい魚が集まるもんなの?」
「っていうか
獲りに行かないから
デカい魚が多いんだよ。」
「そうなんだぁ~。」
その後
良さげな尾赤鯵を
秤にかけてもらいました。
ということで
時計をリセット。
ところで
魚のサイスと言えば
普通に入荷してくる魚の多く
というより、殆どが
かつてのサイズよりも
小さくなっています。
獲り過ぎというのが
原因の一つなのは
間違いありません。
自分が使う魚の中でも
その最たる例が
【西京漬】用の銀鱈(ぎんだら)で
今、自分が使っている銀鱈は
1本の目方が2キロ前後のものです。
自分が、和食の道に転がった頃(25年くらい前)
大きいサイズだと
4~5キロくらいでした。
なので、今のサイズは
約半分。
それくらい、水産資源というものが
枯渇しているのです。
※【西京漬】
人が行かない場所=未開の地 には
大きいものや
珍しいものがいるのは
それこそ、自然のことかもしれません。
珍しいと言えば
こんな魚①にはじまり
こんな魚②やら
こんな魚③までも
当然分からないので
こういう時は
三重県熊野の魚屋さんの出番です。
曰く① ナガサキフエダイかと・・・
曰く② ハナフエダイかと・・・
曰く③ タチモドキ。
詳しい魚屋さんでも
①と②については「かと」
それほど、珍しい魚なのは
間違いありません。
尾赤鯵も含め
数枚の写真を見て
そして
特大の尾赤鯵(あじ)は
かくかく
しかじかで
酢〆にし
今朝の仕入れは
これまでにない経験が出来ました。
通い続けて20年以上経ちますが
まだまだ知らないことばかりです。
料理の道は、長くて険し。
これまで同様
学び続ける姿勢を失うことなく
日々の仕事に臨みます。
「明日は、この魚の話をしてね。
そんじゃ、また」
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