『西京漬』用の銀鱈(ぎんだら)のサイズ
Vol.4004
いらっしゃいませ
基本に据えた
“身体に優しい美味しい日本料理”
を信条とし
天然のとらふぐ、西京漬(西京焼)を
こよなく愛す
【佳肴 季凛】の店主兼熱血料理人の
志村弘信です。
今日(4月26日)は
『西京漬』用の銀鱈の
切身ついてお話しします。
それじゃ、始めるよ~
今日は
銀鱈を
『西京漬』に仕込みました。
これを見たミニふぐ達が
「お疲れ様、親方♬
ここに書いてある数字が
枚数ってことは
分かるんだけど、違いは?」
「違いは、使い道の違いだよ。」
「やっぱり、そうなんだぁ。
どう違うのか
教えてよ。」
「はいよ~。
数字の書いてあるもののうち
これが
ランチ用で
こっちは
お弁当用。」
「お弁当用は分かるけど
ランチ用って?」
「ランチメニューを見てごらん」
「3種類のコースに
3種類の西京焼がついてるね。」
と、ミニふぐ達。
「鯖(さば)、サーモン、銀鱈があって
選べるようになっているのが
分かる?」
「うん。」
「それ用なんだけど
店で出すものだから
単品っていうか一品みたいに
真ん中の綺麗な切身だよ、ほら。」
「わぁ~ 、THE切身って感じ。
銀鱈の身って、白身で綺麗だね。」
「ただ、ランチ用だから
80~90グラムの間になるよう
切身にしてあるんだよ。」
「手に秤でも
ついているの?」
「そんなわけないじゃん。
それこそ、自分の勘を頼りに
包丁しているんだよ。」
「へぇ~、すっげぇじゃん。
親方って、実はロボット?」
「AIが搭載されている
人造人間かもよ!?」
「またまた~。
人造人間だったら
あんなに熱くなるわけないじゃん!」
「AIの進化のスピードに合わせて
毎日アップデートしているんだよ。」
「マジなの?」
「んなわけないじゃん。」
「もう~っ。」
「冗談抜きにして
身体に浸み込んだ勘って
なかなか忘れないんだよ。」
「そうなんだぁ~。
でも、手元が狂うことも
あるんでしょ?」
「勿(もち)の論(ろん)!」
「そういう時は
どうするの?」
「失敗しても困らないように
大きめに切るようにはしているよ。
大きい分には困らないし
基本的にギフトや単品の場合
90グラムだからね。」
「そうなんだぁ。」
「だから
単品やギフトのは
90~100グラムに収まっているでしょ。」
「うん、やっぱりAI搭載じゃん。」
「あはは・・・。
1割くらい大きめにしないと
水が出て、小さくなるから
こうしているんだよ。」
「そんなに水が出るの?」
「切身にした時点で
脱水シートに3~4時間挟んでおくと
かなりの水がでるよ。
ほら。」
「わぁ~
かなり出るね。」
「今日の場合
4本の銀鱈を仕込むのに
8枚の脱水シートを使ったから
単純に8倍の水が
出ることになるからね。」
「そうなると
どうしても大きめに
切らなくちゃならないよね。」
「そうだよ。じゃあ
これを読んでごらん。」
「へぇ~、こんなにも
目方が減るんだぁ。」
「切身にすれば
さらに減るから
どうしても大きめに
切らなくちゃならないんだよ。」
「そこまでしているとは
ビックリだよ」
「小さめに切っちゃったら
どうするの?」
「殆どないんだけど
そうなったら
お弁当用に回しているよ。」
「やっぱ、AIだぁ。(笑)
あと、気になるのが
ランチ用の切身の断面が
綺麗なんだけど、どういうことなの?」
「よく気付いたじゃん。
上身(うわみ)しか
使わないからだよ。」
「上身って?」
「頭を左にした時に
上になる身のことだよ。」
「ふぅ~ん。」
「頭の部分を包丁したら
綺麗っていうか
焼きやすい部分が出て来るまで
単品やギフト用を包丁するんだけど
この時、一番神経を使うよ。」
「分かるような気がするなぁ。」
「この部分だけ
集めるわけにはいかないから
結果的に10枚程度で
止めるんだよ。」
「聞いているだけで
疲れるよ。」
「自分は、もっと疲れるよ。」
「そうだよね~。」
「そんでもって
尾に近い部分は
形が悪いから
110グラムぐらいの
サイズにしているよ。」
「これはこれで
嬉しいかも・・・。」
「そうは言っても
組み合わせる他の魚との
バランスがあるからね。」
「見た目は大事だしね。」
「そうだよ。」
「ただ切身にすれば
いいんじゃないんだね。」
「そうだよ。ギフト用は
お客さんが焼くわけだから
色んな意味で神経を
使わなくちゃならないんだよ。」
「色んな意味って
どういうこと?」
「卸した時に
尾の部分と
中骨を
試し焼きするんだよ。」
「試し焼きって?」
「ジェリーミートって言うんだけど
銀鱈って、加熱すると
身が溶けちゃうものがあるんだよ。」
「え゛~っ、何それ?」
「これだよ」
「鯖もあるの!?」
「鯖は仕方がないで済むけど
銀鱈に出ちゃうと
心が折れるよ」
「そういう時は
どうするの?」
「鯖は泣き寝入りしちゃうけど
銀鱈は何とかして
もらえる場合もあるよ。
そうは言ってもね~。」
「さっきも言ったけど
ここまで神経を使って
仕込みをしているとは
思わなかったよ。」
「自分が納得して
仕込んだものを
お客さんに食べて欲しいし
もっと言うと
魚の美味しさこそが
日本料理の魅力だから
そこは譲れないよ。」
「分かる、分かる。」
「だからこそ
自分で魚市場にも行くんだよ。」
「やっぱり、熱いじゃん。
これならAI搭載の
人造人間じゃないね。」
「だから、言ってんじゃん。」
「あはは・・・。」
そんなわけで
明日も、お気に入りの魚を求めて
沼津魚市場に行って来ます。
「それじゃ
また、明日」 by ふぐとらちゃん
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