〆尾赤鯵(しめおあかあじ)
Vol.3917
生涯、一料理人を貫くためが想いを
『佳肴 季凛』店主兼熱血料理人の
志村弘信が認(したた)めます。
今朝の沼津魚市場は
最強寒波やら
月末の日曜日やらで
ガラ~ン。
こんな感じながらも
鯵(あじ)の入荷はまずまずで
三重県安乗(あのり)産の
鯵(あじ)を仕入れました。
鯵の仕込みを始めようとすると
ミニふぐがやって来て
「おはよぉ~、親方♬」
「おはよう!
寒さのせいで
声が尻つぼみ?」
「こんなに寒けりゃ
そうなっちゃうよ。」
「そうだよね。」
「三重のアジだけど
三重からはトラフグも
仕入れるよね。」
「そうだよ。
この魚屋さんから
直に仕入れているよ。」
「へぇ~。
そう言えば
一昨日
オアカアジを仕入れたよね。」
「そうだよ。尾赤鯵も
三重のだよ。」
「アジのことは
時々ブログにも出て来るけど
オアカアジは見たことないような・・・。」
「何度か書いたことがあるけど
それなら、今日のブログは
尾赤鯵、鯵のどっちにする?」
「アジも気になるけど
オアカアジで・・・。」
「はいよ~。」
尾赤鯵は
その名の通り
尾びれをはじめ
ひれが赤いのが特徴です。
ただ、標準和名(正式名)は
尾赤鰘 (オアカムロ)で
くさやの原料で有名な
鰘鯵(ムロアジ)の仲間になります。
鱗を取り除き
頭を落とし
はらわたを抜いたら
水洗いをし
三枚に卸しました。
酢〆(すじめ)にするため
身が隠れるくらいに
塩をします。
「こんなに塩をしたら
しょっぱくならないの?」
「塩を多めにして、水を抜いて
水が抜けたところに
酢が入るのが
酢〆の理屈だから
こうするんだよ。」
「へぇ~。
これは?」
「これは、おかず用。」
「もしかして
これ?んまそぉ~だったなぁ。」
「濃口醤油と日本酒を
同じ分量にしたものに
20分くらい漬けて
干してから
縮まないように
皮に包丁目を入れて
焼いただけだよ。」
「これだけ?」
「シンプルだけど
美味しいよ。」
「いいなぁ~。」
「もうすぐすると
塩を洗い流すから
離れていて。」
「はぁ~い。」
常温ままま、塩をした状態で
1時間ほどしたら
手早く
水洗いをします。
水洗いしたら
二番酢(にばんず)と呼ばれ
一度酢〆に使った酢で洗い
腹骨をすき取り
酢に漬けるのですが
頂き物の柚子があったので
その果汁と皮を加え
酢に漬けること10分。
こうやって柚子が
もらえるのは
地方の良いところです。
酢から上げたら
キッチンペーパーで
挟んでおきます。
その間に
頭、中骨
腹骨を出汁を取るため
焼いておきました。
血合い骨を取り除いたら
昆布に挟み
次の日まで冷蔵庫へ。
抜いた血合い骨も
焼くことはしないまでも
出汁を取るので、このままです。
そして明くる日の昨日
ランチメニューの“季”の
副菜(ふくさい)や
目鯛、湯葉と共に
三種盛としてお出ししました。
当然のこととして
目鯛と共に
ハーフ&ハーフ丼にすると
「今度は、これ!?
ずっりぃ~、親方。」
「役得、役得♬」
「それにしても
うぅ~んまそぉ!」
「美味かったよ。
焼いたのもいけるし
生もいけるよ。」
「そうだよね。」
「加熱するのも
焼く、煮る、揚げる、蒸すの
4つがあるし
それぞれに違いがあるから
楽しみ方も4倍!」
「うんうん。」
「あと魚って
種類が多いのが魅力だし
尾赤鯵は、鯵と鯖の
中間みたいな美味しさがあるよ。
ただ・・・。」
「ただって、只?」
「その只=無料じゃないよ。」
「尾赤鯵って
意外と人気が
無いんだよ。」
「どうして?」
「はっきりしたことは
分からないけど
血合いや皮の部分の
色変わりが早いから
スーパーなんかだと
売りづらいのがあるかも。」
「他には?」
「水揚げが不安定で
コンスタントに流通しないから
知られていないんだよね。」
「最近、よく聞く
未利用魚ってこと?」
「そこまではいかないけど
マイナーにつきるかな。」
「ふぅ~ん。」
「魚そのものを
食べなくなってきているけど
さっきも言ったように
魚って種類の豊富さが
肉にはない
一番の魅力だから
そのことを
声を大にして伝えたいよ。」
「そうだよね。」
「和食文化自体が
魚菜食文化だから
それを伝えるのも
和食の料理人の役目だからね。」
「今日も親方は、熱いね。
よっ、熱血料理人!
で、今日のお昼は、なぁ~に?」
「そこ!?」
「そこ、大事じゃん。」
「ジャ~ン
鯵フライカレー」
「ピィピィ~ッ
レッドカード!」
「今日みたいな鯵で作ったフライは
フワフワな身で
生パン粉のサクサクが堪らないよ。」
「はぁ~、絶句・・・。」
そして、 クオリティチェック済みの
鯵フライは
今夜の会席料理の
揚物でお出ししたところ
予想通りの
というよりも
「鯵フライの見方が
変わった」の声。
実は、この声は
今日に限ったことでは
ありません。
色んなタイプの鯵フライが
世に出回っていますが
生の鯵で仕込んだ
鯵フライは別物です。
そういう美味しさを伝えるのも
料理人の使命でもあります。
食のために
供してくれた鯵だけでなく
鯵を獲ってくれた
漁師の方々への感謝を
忘れることは出来ません。
このことは、全ての食材について
言えることです。
魚菜食文化の
和食文化を守るためにも
魚市場に通い
食材を肌で感じ
その美味しさを伝え続けます。
「ということで
また明日」 by 熱血君
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