”天然のふぐ”と”養殖のふぐ”の違い
4月も半ばを過ぎました。この時季になると、沼津の魚市場へ着く頃には、夜も明けています。
市場につくのは、5時前後です。今朝は、沼津魚市場のランドマークでもある”びゅうお”も、朝日に照らされています。行き慣れた場所の見慣れた風景とはいえ、何だか妙にすがすがしいものです。
市場に着いて、先ず足を向けるのが、活魚のセリ場です。この時季になると、”鱧(はも)”の入荷も始まっています。
この”鱧”は、写真に写っているように、中国産です。今朝は入荷していませんでしたが、国産の”鱧”も、ここ最近入荷しています。市場の暦は、すでに初夏です。
そんな生簀の隣に、”鱧”とは正反対の時季の魚の”ふぐ”が、一本いました。自称”富士市でふぐ一番好きな料理人”の自分が、近寄らないわけがありません。
”養ふぐ”と書かれています。養殖のとらふぐのことです。気になったので、市場のセリ人に、聞いてみました。
「何で、(ふぐが)一本しかないの。」
「それが、おしまい(のふぐ)でさぁ、今シーズン最後の一本。」
「ふーん。」と、その場を立ち去ろうとしました。”佳肴 季凛”で使うふぐは、天然ものだけですから、あえて仕入れるまでもありません。
「親方、やってよ。つきあってよ。」
ここからは、駆け引きです。
「いくら?」
「○○(円)で。」
「うーん・・・。」
「じゃ、△△(円)で。」
「それで、いいよ。」
交渉成立です。それこそ、安い買い物です。
その後、一通りの仕入れが終わって、帰ろうとすると、今度は”天然ふぐ”が、一本だけいました。値段も、そこそこで仕入れることが出来ました。こちらも、安い買い物です。
今朝は、偶然にも”天然のとらふぐ”と、”養殖のとらふぐ”を仕入れたので、両方の違いを、ご覧下さい。
一番の違いは、尾びれで、上が養殖もので、下が天然ものです。養殖ものは、生簀のなかで他のふぐに、尾びれをかまれるので、こんな風にすり切れてしまいます。
また、泳ぐこともそれほどないので、尾びれも発達しません。これは、ふぐに限ったことではありません。一方、天然ものは、泳ぎ回るので、自然と尾びれも発達します。
ところで、”養殖のふぐ”を仕入れたのは、いいのですが、”佳肴 季凛”で使うのは天然ものだけです。実を言うと、その使い道に、今悩んでいるところです。
だからと言って、天然ものと偽装して、お出しすることはありませんので、どうぞご安心を。もし、養殖ものを使う時は、ちゃんと養殖ものと、申し上げます。自分に限りなく甘く、正直な性分ですから。
志村
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