辞書を片手に、ふぐ
明日(24日)は、
沼津の魚市場が、
休みということもあり、今日は、定休日でしたが、
沼津の魚市場に、仕入れに行って来ました。着くと、
水揚げされた地物の鰹を、
箱に入れ、秤にかけ、セリの準備をしているところでした。以前、お話ししたことがありますが、自分は、ありとあらゆる刺身の中でも、鰹が一番好きですので、素通り出来ず、
1,8キロのものを、1本仕入れることにしました。仕入れとは言っても、定休日ですので、今夜のおかず用で、言わば“休日出勤手当”のようなものです。
その後、生簀のある活魚売場に行き、
生簀を物色すると、
地物のしまふぐ(0,6キロ)が、
1本入荷していました。
“ふぐに魅せられし料理人”である以上、素通りは出来ず、それなりの強気で、セリに臨んでもらうことを、仲買人に伝え、別の売場に、向かいました。ある理由については、後ほどお分かりになるので、とりあえずこの場では、お話ししません。
そうこうしていると、セリの時間となったのですが、
最初に物色した時には、気付かなかったひがんふぐ(0,5キロ)が入荷していたので、
運良く、セリ落としてもらうことが出来ました。このひがんふぐは、南伊豆の妻良(めら)の定置網にかかったものです。
札には、赤目(ふぐ)と書かれていますが、ふぐ類の中には、標準和名と地方名が、混同されているものもあり、これも、その一つです。
その後、
しまふぐもセリ落としてもらうことが出来、2本共、活かしたまま、持ち帰ることにしました。
市場を後にし、途中、
宅配便の営業所に立ち寄り、三重県から届くことになっていた2本のとらふぐを受け取り、『佳肴 季凛』に、戻りました。
戻ると、
とらふぐの入った発泡スチロールを開け、
取り出しました。これら4本のふぐは、全て天然ものです。となれば、気分は、萌え燃え・・・
しまふぐとひがんふぐは、
とりあえず、水槽に入れておくことにしました。
仕込みをするための準備をし終え、程なくすると、
1台の車が、駐車場に入って来ました。降りてきたのは、見づらいかもしれませんが、2人のドイツ人でした。
おふたりは、昨日、日本人の2人の友人と一緒に、
当店で、ふぐ料理を召し上がった方で、御予約の際に、ふぐを卸すところを見て、撮影したいということを、伝えられていたので、そのために、今日、再び、当店に見えたのです。これが、先ほどお話ししたある理由です。
店内に入り、撮影の準備が出来たら、
水槽のしまふぐとひがんふぐを、取り出すと、即座に、写真を撮り始めました。
そして、
卸すことにし、まな板に乗せると、
再び、写真を撮りました。
その後、自分が卸したのですが、ただ黙々と卸すわけにはいかず、ふぐについの知識を、教えなくてはなりませんが、おふたりは、日本語が全く出来ないので、会話は、自分の拙い英語力に頼るしかありませんでするしかありません。
見られているだけでなく、英語での説明となれば、普段の倍以上に、神経を使うのは、当然のことで、嫌が応でも、時間が掛かってしまいそうなので、
水洗いだけは、女将兼愛妻(!?)の真由美さんに、お願いすることにしました。というより、いつものことですが・・・。水洗いする様子も、おふたりは、逃すことなく、写真に収めていました。
また、有毒部位や、
試験の際に、
識別するための札や、
テキストを取り出し、説明してあげたのですが、訳せない単語もあるので、
和英辞典を片手に、説明することにしました。当然、様々なことを、質問されるのですが、分かりづらい時は、ゆっくり話してもらい、どうにかこうにか、返答し、理解してもらうことが、出来ました。
ちなみに、ふぐという魚を食べるのは、日本と韓国だけで、日本のふぐ料理と韓国のそれは、かなり違いがあるというのを、かつて、本で読んだことがあります。
また、欧米では、有毒部位を取り除いてあっても、流通させることは出来ません。というのも、有毒な魚として、扱われているからです。さらにいうと、そこまでして食べる日本人を、奇異の眼差しで、見る人もいるようです。
とは言っても、中には、美味しいという話を耳にして、日本に来たら、食べたいと思う外国人も多く、このおふたりも、そんな方達で、日本人の友達にお願いして、当店のふぐ料理を召し上がったのでした。
日本料理の中でも、特殊ジャンルとも言えるふぐ料理を、海外の人に、このように評価され、興味、関心を持ってもらえたということは、ふぐを愛してやまない自分としては、この上なく、嬉しかったのはこの上ありませんでした。
ふぐの仕込みを終えたら、
外に出て、
3人で、記念撮影をしました。そして、
車に乗り込み、『佳肴 季凛』を後にし、明後日、ドイツに帰るとのことです。
おふたりは、プロのカメラマンで、日本文化を紹介するため、約一ヵ月間、日本に滞在し、東京、長野、富山、岐阜、京都、姫路、広島などを訪れ、このレンタカーで、約6000キロも走り、滞在中に撮影した写真は、秋頃、ドイツ国内の幾つかの場所で、展示会を開き、その資料が出来上がったら、送ってくれるそうです。
その後、自分は、
先付の白子豆腐、小肌を仕込んだり、
米を研いだりしましたし、肝心のおかず用の鰹も、
仕込みました。
繰り返しのようなことになりますが、海外の人に、日本料理文化が、少しでも知れ渡り、そんな担い手めいたことが、実際に出来たことが、今日は、非常に嬉しかったので、大好きな鰹と共に、一献を傾ける次第です。(笑)
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