釣り針を飲み込んだ天然のすっぽん
天然のすっぽんは
釣り針を
飲み込んでいることもあるので
卸す時には
細心の注意が必要です
2024年10月20日
Vol.4515

いらっしゃいませ
基本に据えた
“身体に優しい
美味しい日本料理”
を信条とし
天然のとらふぐ
西京漬(西京焼)を
こよなく愛す
【佳肴 季凛】の
店主兼熱血料理人の
志村弘信が
今日も認(したた)めます

「おはよう、親方
これも
天然のすっぽん?」
と、熱血君
「おはよう
そうだよ
昨日、沼津の知り合いから
仕入れて来たんだけど

笑えるのが
もう1パイいたんだけど
逃げちゃったらしいんだよ」
と、自分
「え゛~っ
で、どうなったの?」
「無事に戻って来た
らしいんだけど

これこれ」
「すっぽんって
自分の家が分かるの!?」
「一週間かそこらで
自分の家の場所を
覚えるとは思えないけど
よっぽど居心地が
良かったんだろうね」
「逃げたはいいけど
周りに水が無かったから
戻って来たとか・・・」
「それもあるかもね
一応、亀だからね」
「ところで、口から
糸みたなものが
出ているけど・・・」

「釣り糸だよ」
「ってことは
釣り針を
飲み込んでいるの?」
「そうだよ」
「そんなこと聞いたら

急に喉の辺りに
違和感が・・・」
「周りの空気に
すぐに流されるんだねwww」
「そうやって
いじるのは良くないよ
嫌われても
知らないからね」
「はいはい
それはそれとして
これから卸すから
離れていてね」
「はぁ~い」

すっぽんを卸す時は
仰向けにして
首を使って
起き上ろうとしたら
一気に首を掴んで
付根に包丁を入れて
締めます
最近では
気にならなくなりましたが
覚えたての頃は
すっぽんが目をつむる様子に
心苦しさを感じたものです

「とらあえず
卸し終えたんだね
締めた直後は
かなりグロかったね」
「なんだかんだ言っても
四つ足だから
そうなるよ」

「頭が無いけど・・・」
「釣り針を
飲み込んでいるから
釣り糸を手繰って
針が掛かっている場所を
探るから
緊張しちゃうよ」
「そのまま
お客さんが食べちゃったら
事件になっちゃうもんね」
「多分、このすっぽんが
飲み込んだ針は
喉にあるんだけど
凄いのになると
釣り針が肩の辺りに
引っ掛かっていることも
あるんだよ」
「口から飲み込んだ針が
肩にあるって
信じられないよ」
「これまでにも
何度か見たことあるよ」
「マジなの?」
「マジだよ」
「言われてみれば
あんだけの数の
天然のすっぽんを
卸していれば
不思議じゃないけど
そういう経験があるなんて
すっぽん博士に
なれるんじゃね?(笑)」
「そんなことはないけど
自分の推測だと
喉から気管支に入って
動いているうちに
肩までたどり着いて
そのまま
引っ掛かった状態
って感じかな」
「どうなんだろうね
そういうのを
研究している人って
いないのかな」
「養殖が一般的だから
いるんだろうけど
色々と調べてみたら
生態に関しては
謎がかなり多いらしいよ」
「へぇ~
この際
天然のすっぽんの
研究者になるのは
どう?
あっ、ついでに
天然のとらふぐもセットでも
いいんじゃね?」
「どっちも
食材としての研究は
するけど
生き物としての
研究はパスで・・・」
「そうは言っても
ここまで調べるのも
なかなかだと思うけどね(笑)」
「別のレアケースだと
釣り針が2つ
あったこともあるよ
その時は
喉と肩だったけどね」
「ヤバっ
すっぽんは痛みを
感じないのかね~」
「それもまた
謎だね」
その後
釣り針は
喉から
出て来ました

なお、喉全体の写真は
グロいので
一部のみです

その後
卸したすっぽんは
湯通しをして
薄皮を剥くことにしました
薄皮の下処理が
すっぽんの仕込みの中で
もっとも
手が掛かるものですので

こういう時は
女将兼愛妻(!?)の
真由美さんの出番です

「真由美さんも
手慣れたもんだね」
「卸すことは出来ないけど
皮剥きは
私の役目だからね
だから
卸したすっぽんの数だけ
皮剥きをしているよ」
「すっぽんの皮剥きをする
日本料理店の女将さんなんて
そうそういないんじゃね?」
「どうなんだろうね~」
真由美さんが剥いた後に
自分が手直しをし

すっぽんの仕込みが
終わりました

「これも
すっぽん鍋になるの?」
「そうだよ
すっぽんは
出汁に美味しさがあるからね
っていうか
すっぽんは
鍋一択だよ」
「そこまで言う
美味しさって
どんなものなの?」
「他の食材には無い
唯一無二の美味しさだよ
『すっぽんは
何に似ているの?』って
訊かれることがあるけど
答は
ただの一つで
すっぽんの味だよ」
「そっかぁ~」
すっぽんほど
見た目と美味しさに
ギャップがある食材は
他にはありません
しかも、日本料理の中では
美食中の美食です
卸し方だけでなく
仕込み方と
全てが他の食材とは
異なります
さらには
すっぽん料理の技法は
奥深く
長い伝統に
支えられているものです
すっぽん料理に限らず
日本料理の伝統を受け継ぎ
後世に伝えることを
肝に銘じながら
日々の仕事に
臨み続けます

「ランチの西京焼が
んまそう~
そんじゃ、また」
コエタス
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