交雑ふぐ、再び
今朝の沼津の魚市場は、
所謂“夏枯れ”と言った感じで、魚も少なく、
地物の魚も、同じくまばらでした。この時季になると、巻網漁の網で、とらふぐが水揚げされることもあるので、ここに並んでいるものを、物色していると、
0,9キロのとらふぐと、
0,3キロのものもいました。ただ、この0,3キロのものを、手に取ってみると、
とらふぐには似ているものの、とらふぐらしからぬ姿をしていました。前回お話ししたような交雑ふぐの可能性が高いと思ったので、この売場の担当者に、そのことを伝え、セリにかけないように、してもらいました。
というのも、交雑ふぐは、その毒性が分からないので、食用が不可能とされているからです。ちなみに、このふぐは、とらふぐとまふぐの交雑のような感じでした。
こうやって並んでしまったということは、ふぐ類に関する知識がないことによります。ただ、静岡県に限らず多くの都道府県では、ふぐを調理し、提供するとなると、免許が必要で、“万が一”ということは、考えにくいと思われます。
ですので、最終判断は、我々のような料理人で、言わば、最後の砦かもしれません。ただ、食の安全ということについて言えば、どんな食材についても、同様のことが言えるはずです。
そう思うと、常日頃、心して料理をしなくてはならないことを、改めて感じたのでした。
★★★ 夏季限定ランチコース『涼し夏(すずしげ)』 ★★★
この時季、当店では、夏季限定ランチコース『涼し夏(すずしげ)』(1,500円 全7品)を、御用意しております。
当店オリジナル料理の“サラダ素麺”をメインにした、清涼感溢れるコースとなっており、食後のお飲物付です。
静岡県沼津産の天然とらふぐ2本のうちの1本は、交雑ふぐ
今朝、沼津の魚市場の活魚売場に行くと、
2本のとらふぐ(天然)が、
入荷していました。1本は、
0,4キロで、もう1本が、
0,5キロの小さいもので、自分はこれぐらいの大きさのものを、“チビとら”と呼んでいます。この2本の産地は、
魚市場から、車で、20分ほどの小海(こうみ)というところで、鯵(あじ)、鯖(さば)などの巻網にかかったものです。
久し振りに、活きた天然のとらふぐを見た以上、自称“富士市で一番ふぐが好きな料理人”の自分としては、もちろん気分は、萌え燃え・・・
真夏であるだけでなく、“チビとら”ということもあり、
2本とも、すんなりセリ落としてもらうことが出来、
そのまま活かしたまま、持って帰ることにしました。『佳肴 季凛』に戻り、
水槽に入れようとした時、1本の姿が、
斑点が通常よりも、小さくて、数が多いだけでなく、
顔の部分に、薄い黄色い線があることに、気付きました。
これまでにも、このようなふぐを、何度か見たことのある自分は、すぐに、このふぐが、親のふぐが判別出来ない交雑ふぐと、判断しました。こんな違いがありながらも、市場で気付かなかったのは、迂闊というか、不覚としか、言い様がありません。
交雑ふぐとは、あいの子のふぐで、その毒性についても、判別が出来ないので、食用にすることは、不可能です。
とりあえず、水槽に入れておくことにし、ランチの営業が終わり、
水槽から取り出した2本を、見比べてみると、その斑点の大きさは、
一目瞭然です。また、手前のふぐ、つまりとらふぐの背中にある棘を見てみると、
はっきりとしており、背びれ付近まで、達しています。一方の交雑ふぐの棘は、
あるものの、数も少なく、小さいものでした。
並べて、顔を眺めてみると、
とらふぐの方は、顔には、何もなく、白いままで、交雑ふぐの顔には、
先程の写真同様、黄色い線が入っていました。これらの特徴から、この交雑ふぐは、とらふぐとまふぐの雑種の可能性が高いと判断しました。
また、交雑ふぐを研究している専門家によれば、このような特徴は、とらふぐとまふぐで、人工的に作り出した雑種で確認されているとのことです。
卸し終えたとらふぐは、水洗いし、
きれいに拭き上げ、交雑ふぐは、
間違いがあるといけないので、そのまま、とらふぐの内臓と共に、処分することにしました。
結果的に、自分は、とらふぐでないと気付き、お客様にお出しせずにすみました。また、ふぐを取り扱うには、免許がいるとはいえ、一見したところでは、なかなか気づかないこともあり得ますし、かなり注意が必要です。
現在、ふぐの取り扱いに関しては、各都道府県の条例に基づいていますが、今後は、匡レベルでの法整備も、必要になるかもしれません。
一年を通じて、とらふぐに限らず、様々な種類のふぐを、数え切れない量を卸しているので、交雑ふぐに出くわす可能性が高いのは、当然かもしれませんが、この際、新種のふぐを、見つけてみたいと、密かに思っているような、いないような・・・・・。
★☆★ 夏期限定 鱧(はも)料理 ☆★☆
只今、夏期限定コースとして、鱧料理をご堪能いただけるコースをご用意して、皆様のお越しをお待ち申し上げております。
『鱧彩々』 (おひとり 6,000円)と銘打ちました。この時季の美食の極みでもある鱧の味を、是非ご賞味下さいませ。
詳細は、【鱧料理】のページをご覧下さい。
新子
光物の定番の一つが、
小肌(こはだ)で、沼津の魚市場に入荷してくる小肌の殆どは、
佐賀県有明海産です。小肌は、一年を通じて、入荷してくるのですが、6月の半ばを過ぎた頃になると、小肌の幼魚の新子(しんこ)が、
入荷し、
一緒に、売場に並ぶこともあります。大きさの違いは、
一目瞭然です。小肌は、鮗(このしろ)の若魚で、新子、小肌、なかずみ、鮗と名前が、変わります。しかしながら、出世魚とは呼びません。
というのも、小さければ、小さいほど市場価値があり、出世魚というのは、大きくなるにつれ、値段も上がるからで、小肌には、このことがあてはまりません。特に、出始めの新子のキロ単価は、入荷量も、ほんのわずかということもあり、天然の生の本鮪以上で、それこそ、目が飛び出るほどの値段なのです。
光物である小肌は、『佳肴 季凛』のような日本料理店では、なくてはならない魚ということもあり、ある程度、値段が落ち着いてから、自分は使うようにしています。
ただ、料理の道の始まりは、鮨屋でしたので、新子を見ると、妙な胸騒ぎを覚えてしまうのです。この日は、値段もそこそこでしたので、
この一袋を、仕入れることにしました。ただ、小さくて、数が多い新子の仕込みは、職人泣かせですので、それなりの覚悟の上でした。
仕入れた新子は、500グラム入っており、大きさはまちまちでしたが、
大雑把に仕分けたところ、このような3つの大きさでした。鱗を取ってから、
頭を落としたら、
塩水の中に入れます。この時の塩水の濃さの目安は、海水程度です。終わったら、
氷水で、素早く、
2,3度、
水洗いします。まな板をきれいにしたら、開くのですが、その前に、
バットに細かくした氷を敷き、
別のバットを置き、
大きさごとに分け、開いていきます。言うまでもありませんが、こうするのは、鮮度が落ちるのを防ぐためです。
開き終えると、
全部で、64枚ありました。つまり、64匹開いたことになります。開いた新子は、それぞれの大きさが分かるように、
塩を敷いた盆ざるに乗せたら、量を加減しながら、塩を振ります。塩の溶け具合をみながら、
酢の入ったバットに昆布を浸します。酢は、
新子を仕込むので、穀物酢とりんご酢を同割りにしてあります。昆布が、
しんなりしたら、合わせ酢から、あげておきます。そうこうしていると、新子の塩が溶けてくるので、
水洗いをします。大きさも違うので、一度にこの仕事は出来ませんので、その都度、
様子を見ながら、やらなくてはなりません。全て水洗いをしたら、
今度は、
一度酢〆に使った二番酢で、それぞれを、
酢洗いします。その後、
先程、昆布を浸した合わせ酢に、大きさごとに付けていくのですが、大きいものから漬け、漬け終えたら、酢から上げ、その後、次の大きさのものを漬けていきます。
今回のように、一番小さいものは、酢だけでは、味が強くなってしまうので、
氷を入れ、酢の具合を加減してから、
漬けます。言い忘れましたが、酢〆の理屈は、塩で、余分な水分を取り除き、取り除かれたところに、酢が入り込むというものですので、塩加減が、キーポイントなのです。
全て、酢に漬けたら、余分な水分などを拭き取るために、
キッチンペーパーを、盆ざるに敷き、新子をおいてから、
その上にも、キッチンペーパーを乗せます。しばらくしたら、
穴開きのバットに新子をおき、
余分な水分を取り除くのと、旨味を補うために、先程の昆布を乗せます。これで、ようやく新子の仕込みが終わりました。
昆布で挟んでおくのも、半日程度が目安で、
頃合を見て、昆布を外したら、このまま冷蔵庫にしまっておきます。コース料理をメインとしている当店ですので、
鱧料理コースのお客様には、このような四種盛りで、お出しし、新子以外のものは、生の本鮪(大間)、鱧(和歌山)、湯葉でした。
新子だけの場合は、
大中小のバランスを考えながら、このように、盛り付けてみました。
脇役に近い小肌ですが、新子の出回る一時季は、主役になります。こういうのも、季節を重んじる日本料理の趣の一つかもしれません。
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詳細は、【鱧料理】のページをご覧下さい。
三連休のお知らせ
日本全国津々浦々、夏休みを満喫されている方も、いらっしっしゃると思いますが、『佳肴 季凛』も、遅まきながら、
16日(日)、
17日(月)、
18日(火)と三連休させて頂きます。なお、17日以外の月曜日も、通常通り、定休日とさせて頂きますので、宜しくお願い致します。
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7月の鮪、色々
8月になりました。逃げ出したくなるような暑い日が続き、土曜日には、水だけでなく、
雪も撒いてしまいました。雪とは言っても、富士山やエベレストの万年雪でもなく、冷凍庫の霜ですが・・・。
こんなことをやっても、涼しくなるわけでもなく、まさに、“焼石に水”状態。猛暑を超え、酷暑、さらなる上をいく激暑・・・。
また、避暑を求め、
この際、水槽浴でもしようかと思いましたが、中には、狂暴な鱧がいるので、もちろん断念。
天気予報を見ても、連日、マークと、最高気温が30度超えのRUSH。もう絶句・・・。ここまで来たら、時が経ち、涼しくなるのを待つしかありません。
そんなことはさておき、今日のお話しは、月末というか、月初めの恒例の“鮪コレクション”ということで、7月に入荷した生の鮪の数々です。いつものように、東京・築地からの天然ものです。
先ず最初に入荷したのが、
新潟県佐渡産の生の本鮪で、初めて仕入れた産地でした。佐渡は、漁場も良いこともあり、マグロ類に限らず、様々な魚が水揚げされています。
その次が、
ニュージーランド産と、
オーストラリア産の南鮪でした。南鮪は、通称“インド鮪”と呼ばれているので、ニュージーランド(また、オーストラリア)国籍のインド人とか、“外人部隊”のような呼び名を、自分は付けたりしています。
南鮪の時季が、そろそろ終わりとなると、津軽海峡で、本鮪が水揚げされ始め、
“インド人”の後は、青森県大間産の本鮪が、
連続で、入荷しました。
これまでに、何度もお話ししているように、大間は有名な産地ですが、一番ではありません。お客様の反応が一番なのは、紛れもない事実ですので、お出しする側としては、或る意味都合が良いのは、否定出来ません。
また、大間以外の松前、戸井、三厩、竜飛などの津軽海峡で、本鮪が水揚げされるのは、これから、年明けくらいまでです。真夏のど真ん中ですが、暦の上では、今週にも秋となり、季節は少しずつですが、移ろいつつあります。
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