識別不能なふぐは、中間種ふぐとか、交雑ふぐと呼ばれるハイブリッドふぐ!?
昨日の朝、仕込みをしていると、
宅配便で、二つの荷物が届きました。蓋を取り、
袋から取り出すと、
大小様々の13本のとらふぐと1本のしまふぐが、入っており、全て三重県熊野産のものです。ちなみに、しまふぐは、全てのひれが、黄色をしているので、一目瞭然です。また、もう一つの箱に蓋を取ると、
富山県氷見産のもので、
大きめの3本のとらふぐで、
2,3キロのものが、2本と1,9キロのものが、1本でした。言うまでもありませんが、どちらの産地も、天然ものです。このまま卸したかったのですが、合計で、17本もあると、ランチの営業に間に合わないので、とりあえ冷蔵庫にしまっておきました。
ランチの営業が終わると、
俎板回りを養生して、
卸し始めました。一昨日と違って、昨日は、女将兼愛妻(!?)の真由美さんが、
卸しているそばから、水洗いをしてくれました。昨日入荷した中で、一番大きかったのは、
2,8キロの三重産のもので、キロ一番小さかったのも三重県産で、
350グラムほどの手のひらサイズでした。
この二つを並べてみると、
これほどまでに違います。2,8キロのものは、メスでしたが、富山県産の3本は、全部オスでしたので、
見事なまでの白子が入っており、まさに、たわわ・・・。結果的に、
真由美さんのおかげで、休憩時間に終わることが出来、一昨日、昨日で卸したふぐは、とらふぐが、30本、さばふぐが、23本、しまふぐが、1本の合計54本で、時季外れの“ふぐラッシュ”に終わった二日間でした。
そんな“ふぐラッシュ”は、昨日で終わる予定でしたが、自然相手のことですので、予想はつかず、今朝、仕込みをしていると、富士市内の魚屋さんから、由比産のとらふぐとしょうさいふぐの入荷があるとの連絡が入ったので、仕入れることにしました。
ランチの営業が始まる頃、
届けられ、中を見ると、
このように活きていました。そのまま締めたのですが、
真ん中のふぐが、とらふぐではないことに気付きました。というのは、お腹の辺りに、黄色い線が入っているからです。とらふぐは、
このような姿をしているので、その違いはお分かり頂けると思います。
では、このとらふぐに似たふぐの名前ですが、日本近海に生息しているふぐに当てはまるものはなく、交雑ふぐとか、中間種ふぐと呼ばれている識別が不可能なふぐで、ハイブリッドふぐとも呼ばれています。ハイブリッドふぐが、生まれるのは、地球温暖化に伴う海水温の上昇により、産卵時期が、重なり始めたという説があります。
今日のハイブリッドふぐの特徴は、体側に黄色の線があるまふぐと、背中に棘があるとらふぐの特徴が確認出来るので、その交雑とも考えられます。どちらのふぐも、食用可能なふぐですが、この二つの交雑とはいえ、ハイブリッドふぐは、有毒部位がはっきりしていないので、食べることは出来ません。というより、食べると、痺れる可能性大なのです。
しかしながら、由比に限らず、太平洋側では、まふぐの水揚げが少なく、静岡県や三重県産のふぐを多く扱う自分も、まふぐは殆ど仕入れたことがありませんし、まふぐよりも、しょうさいふぐ、さばふぐ、しまふぐの方が、圧倒的に多いのです。
一方、とらふぐの別の仕入れ先の下関、富山などの日本海側では、しょうさいふぐ、しまふぐ、さばふぐなどは、殆ど水揚げがないようで、その代わりに、まふぐ、ごまふぐなどが、多く水揚げされているのです。
つまり、とらふぐは、全国的に生息するふぐですが、その他のふぐについては、太平洋側にいれば、日本海にはいなくて、太平洋側にいなければ、日本海にはいるというのが、一般的なようです。
だとすると、このハイブリッドふぐは、とらふぐとしょうさいふぐの交雑ではないかという仮説を、自分は立てたのですが、自称“富士市で一番ふぐが好きな料理人”と言っても、専門家ではないので、個体数が少ないだけでなく、その特徴にも、大きな個体差があるハイブリッドふぐについては、これ以上の判断は出来ません。
ですので、フグ毒専門の研究家に、その判断を委ねることにしました。FAXで教えてもらった送り先は、
長崎大学水産学部で、締めた状態で、
箱詰めにして、
宅配便で、発送しました。どのような研究結果が出るのか、非常に楽しみです。
三重県産のとらふぐ&さばふぐ
月曜日が定休日ですが、仕込みをすることが多く、今日もそんな日でした。仕込みが出来るように、段取り終えてから、
宅配便の営業所に行き、三重県から届くことになっていた荷物を、取りに行って来ました。そのまま【佳肴 季凛】に戻り、蓋を開けると、
予定通り、とらふぐとさばふぐが、入っており、発送する前の三重県の市場では、
こんな感じでした。
袋から取り出すと、全部で14本あり、比較的小さいサイズのもので、一番大きいものでも、
600グラムを超える程度で、一番小さいものは、
400グラム弱のものでした。ちなみに、このよう小さいとらふぐのことを、一般的に“小とら”と呼んでいますが、自分は、
こんな風に、手のひらに乗るほどの大きさなので、“チビとら”と呼んでおり、
頭も、やはり小さいですし、生殖腺も、
やはりチビ。ちなみに、この写真のものは、オスです。
とらふぐを卸し終えたら、さばふぐ。その後、水洗いをし、
このように並べると、その数は、さばふぐの23本と合わせると、37本です。
身の上に、とらふぐの上を、
とらふぐのアラを置いて、ようやくふぐの仕込みは、終わりました。
前回お話ししたしょうさいふぐ同様、梅雨の時季になる前に、秋から冬のシーズンとは、若干違った感じで、ふぐが入荷してきます。それが過ぎると、いよいよ本格的な夏到来です。
沼津産のとらふぐは撃沈するも、由比産のしょうさいふぐでリベンジ
今朝は、二日連続で、
沼津の魚市場に行き、
予定通り、2本の鱧(愛媛産)などを、仕入れて来ました。この2本の鱧を持って帰る準備をしていると、
生簀のところにある札を、目にしました。生簀を見ると、札に書かれているように、
0,4キロの小さな天然のとらふぐでした。このとらふぐは、地元・沼津の刺し網にかかったもので、“ちびトラ”という呼び名が、相応しいくらいの大きさでした。
仕入れる予定は全くありませんでしたが、自称“富士市で一番ふぐが好きな料理人”としては、素通り出来ず、仲買人に頼んだものの、あえなく撃沈してしまいました。ただ、仕入れるべきものは、仕入れたので、お客様にお出しする料理には、全く問題がなかったので、目をつむることは出来ました。
とは言っても、結果的に、仕入れるつもりで、セリ落とせなかったことは、フラストレーションになるのは当然ですし、それが天然のとらふぐであったので、その葛藤は、如何ともしがたいものでした。
そんな不満を、頭の片隅に置きつつ、そして、薄れつつあるのを感じながら、仕込みをしていると、携帯電話が鳴りました。電話の主は、静岡の魚市場に通う富士市内の魚屋さんで、こんな感じのやり取りをしました。
「親方、由比のしょうさいふぐの活けが、6本入荷しているんですけど・・・。」
「というより、自分用でしょ?」
「もちろんです。いいですよね?」
「もちろん。待ってますよ。」
もちろんという言葉を、双方言っているのは、例年、この時季になると、しょうさいふぐが、定置網にかかるので、入荷があり、思うような値段であれば、余程のことがない限り、仕入れることは、出来レース状態だからです。
そんなやり取りを終え、ランチの営業をしていると、
魚屋さんが、配達に来ました。蓋を取り、中を確認すると、
そのまま、
バケツに移し、
6本全て、
締めてから、
再びバケツに入れて、血抜きしました。
ランチの営業が終わり、
俎板に乗せ、卸すと、
産卵間近ということもあり、オスには、成長した白子(白子)が、入っていました。しょうさいふぐの白子は、とらふぐ同様、無毒ですので、食用可能です、一方のメスには、
同様に、真子(卵巣)が入っていましたが、白子と違い、猛毒なので、食べれません。というより、食べると痺れてしまうので、食用は認められていません。
結局、6本のうち、
3本がオスで、このような白子が入っていました。
先ほどお話ししたように、この時季は、由比産のしょうさいふぐの入荷があるので、
真空パックしてから、冷凍しておきます。というのも、入荷がなくなり、十分な量がまとまってから、しょうさいふぐの白子豆腐を作るからです。
肝心の身の部分も、急なご予約や、魚の入荷が少ない時のために、
しょうさいふぐの刺身 で、お出し出来るように、白子同様、真空パックしてから、冷凍しておきます。
ふぐというと、とらふぐのイメージが強いだけでなく、冬の味覚の代表と思われがちですが、定置網にかかる由比産のしょうさいふぐのように、初夏に入荷するのもあります。ですので、時季ごとにより、旬というものを、一概に言うことを出来ないのが、自然を相手にする料理の良さなのか、そうでないのか・・・。
二日連続で入荷した天然のとらふぐは、富山県&三重県産
昨日は、
富山県氷見から、
天然のとらふぐが入荷しました。全部で、
3本あり、
合計で、4,0キロでした。このうちの1本は、
十分なほど成長した白子が入ったオスでした。結果としては、3打数1安打のまずまずの成績ということになります。
そして、明くる日の今日は、
宅配便で、
三重県から、2本の天然のとらふぐが、届きました。昨日、今日で合計5本仕入れたのですが、頭の付け根に切れ込みがあるのは、活きていたものを締めたからです。
活かしたままで、送ることも可能ですが、この時季、水揚げされる天然のとらふぐの多くは、冬場の釣りものと違って、定置網にかかるもので、輸送中に、陽気の関係で、水温が上がって、死んでしまうこともあるので、このように締めてものを、送ってもらっています。また、刺身ではなく、専らふぐちり、唐揚などに使うのも、その理由でもあります。
箱から出し、
1本卸すと、白子入りのオスで、もう1本卸すと、
これまた白子入りで、今日は、
2打数2安打で、二日間で、5打数3安打の好成績に終わることが出来ました。
今のところ、明日の入荷の予定は分かりませんが、沼津、由比などの地元で、意外と水揚げがあり、もしかすると・・・。
寒鰤(ぶり)で有名な富山県氷見から入荷した天然のとらふぐは、5キロアップのジャンボサイズの2本
今朝は、沼津の魚市場に、
仕入れに行って来ました。いつものように、【佳肴 季凛】に戻り、仕込みをしていると、
宅配便で、荷物が届き、蓋を開け、
富山県氷見港と書かれたセロハンを取ると、
丸々と肥えた黒いとらふぐ(天然)が、2本入っていました。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、氷見は、とらふぐというよりも、寒鰤(かんぶり)の方が有名で、大間の鮪に次ぐくらいのブランドの一つでもあります。
そんな氷見から、初めて入荷したこともあるので、
卸す前に、記念撮影をしました。まさに、“両手にふぐ”とこのことですし、自称“富士市で一番ふぐが好きな料理人”としては、願ったり、叶ったりの写真です。
この2本のジャンボサイズのとらふぐの目方は、
63、52と書かれているように、1本が6,3キロで、もう1本が、5,2キロのものでした。頭の付け根に、包丁を入れた痕があるのは、活きていたものを締めたからです。一日置いたのは、お腹に入っているエサを、吐き出させるためです。
そのまま、1本卸すと、
このように、卵巣がありました。とらふぐの卵巣は、猛毒なので、食べることは出来ません。間違って食べると、痺れてしまいます。
最初の1本を、卸し終え、
2本目も卸したのですが、
これまた、メスでした。ただ、4キロ以上の天然のとらふぐの殆どが、メスであることが多いので、この結果は、予想通りでした。
卸し終え、
水洗いをし、綺麗にしたものがこちらで、ジャンボサイズのものゆえ、
半分に包丁した頭の部分も、これぐらい大きなものでした。
この2本のようなジャンボサイズのものとなると、大味と思われるかもしれませんが、そのようなことは、決してなく、その美味しさは、比べものになりません。タイトルにもあるように、氷見で、最も有名な魚の一つでもある寒鰤が、その幼魚のワカシやイナダとは、全くの別物でもあるというのと、全く同じです。さらに、唐揚やちりのように、加熱することで、その旨味は、凝縮されます。
また、南北に長い日本列島ゆえ、どこかしら、天然のとらふぐの水揚げがあり、秋から冬にかけてのイメージが強いふぐ料理ですが、これからの時季でも、当店では、ご予約にて、御用意が可能ですので、お召し上がりたい方は、事前にお問い合わせください。なお、当店のふぐ料理については、こちらをご覧下さい。
6本全て白子入りは、三重県産の天然のとらふぐ
今朝の沼津の魚市場で、
仕入れてきた魚の一つが、
3本のさばふぐで、南伊豆産のものでした。このさばふぐを卸し終え、、水洗いをしようとしていると、
宅配便で、三重県から、荷物が届き、蓋を取り、
袋から取り出したのが、
6本のとらふぐです。
おまけで、
2本の小さいふぐが、入っていました。手前のものが、むしふぐで、奥のがしょうさいふぐですが、むしふぐは、食べられないので、そのまま処分しました。むしふぐについては、こちらをお読み下さい。
ところで、とらふぐの頭の付け根に、傷があるのは、締めてあるからで、三重県の市場では、
このように、スイスイと泳いでおり、この写真は、送ってくれた魚屋さんが、撮影したものです。
このブログをお読みになっている方の中には、秋口から、三重県から仕入れる天然のとらふぐは、釣りのもので、活きたまま、送られてくるのをご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、活きているのにもかかわらず、あえて締めるのは、この時季のものは、定置網にかかったもので、釣りのものに比べ、弱いこともあるので、活かしたまま送られても、水温が上がってしまい、死んでしまうこともあるからです。
6本のうち、5本卸し終えると、
5本全てがオスで、
白子もバッチリ入っていました。白子は、対になっているので、このように、10個あります。この時点で、5打数5安打で、確率論的に言えば、5本のうち、全てがオスであるのは、2の5乗分の1となり、その数字は、わすが2%です。
ここまで来たら、狙うのは、6打数6安打しかありません。最後の1本を卸し始めると、
オスと思しき兆候が見られ、
その兆候通り、オスのとらふぐで、白子が入っていました。結果的には、6打数6安打で、先程と同じ様に言えば、2の6乗分の1で、1,5%というゼロに近い数字が、出ました。
白子もさることながら、卸したのが6本ともなると、水洗いにも、手間がかかります。となれば、
女将兼愛妻(!?)の真由美さんの出番。水洗いを終えたのが、
こちらで、6本のとらふぐ、3本のさばふぐ、1本のしょうさいふぐの合計10本で、
白子 も、この後、水気をきれいにふき取ると、
“白いダイヤ”の称号に相応しく、鎮座していました。
白子もさることながら、身の部分は、活け締めのものですので、刺身でお出ししても、全く問題が無いのですが、予定通り、
ぶつ切りにして、下味をつけてから、唐揚にしました。活け締めの天然のとらふぐですから、その美味しさは、今更ながら、語るまでもありません。
過去最大の天然のとらふぐのひれは、三重県産
去年の10月から、天気の良い日には、
自分が卸した天然のとらふぐのひれを貼り付けたものが、【佳肴 季凛】では、ほぼ毎日見ることが出来ましたが、そんな光景も、いよいよ終わりが近づいて来ました。ちなみに、真ん中のひと際大きいひれは、
このひれも、乾いたので、
板から、はがすことにしました。
7,0キロというと、超特大ということになるのですが、これまで仕入れた最大のものは、焼津産の7,5キロのものでした。最大だからと言っても、必ずしも、ひれも最大だとは限らないので、
取り出して、この三重県産の尾びれ(右側)と比べてみると、
三重県産のものの方が、大きいことが分かりました。また、同じ様に、昨年の三重県産の7,3キロのとらふぐのひれを、
取り出し、
比べてみると、明らかに、7,0キロのもの(右側)の方が、大きいことも分かりました。ちなみに、7,3キロのものは、7,5キロに次ぐ大きさのものです。つまり、これまで自分が卸した天然のとらふぐのひれで、一番大きいものは、7,0キロの三重県産という結果が、出ました。
7キロ以上の超特大サイズのものとなると、魚体そのものというより、内臓の目方が大きい場合もあるので、このような結果になったと思われるのですが、ともかく最大のひれを手に入れることが出来たので、
日付を記した袋に、
入れ、後生大事に取っておくことにしました。
この3本の超特大の天然のとらふぐのひれは、自称“富士市でふぐが一番好きな料理人”の自分のお守りであるだけでなく、いつか10キロという天然のとらふぐを仕入れることが出来るためのお守りであるこも、言うまでもありません。
三週連続で、定休日にふぐ
今朝、沼津の魚市場に行くと、
長崎県産の天然のとらふぐが、2本入荷していました。ただ、一昨日の金曜日の時点で、今朝のセリにかけられるのは、分かっていましたので、今朝の状況は、予定通りのことでした。
そんな予定通りの状況でしたので、迷うことなく、仕入れるつもりでいたところ、
これまた、予定通り、2本共、セリ落としてもらうことが出来ました。ちなみに、58というのが、自分の仲買人の番号です。
どちらも、1,7キロのもので、手前のものが、
こんな感じで、奥のものが、
このようなものでした。2本共、持って帰ろうと準備をし始めると、知り合いの魚屋さんから、「1本、譲って欲しい。」と、お願いされたので、お互い商売に携わる者の仁義として、快諾し、自分は、手前のものを、
持って帰ることにしました。
【佳肴 季凛】に戻ると、
ランチの準備だけでなく、他の仕込みもあってので、
そのまま、
水槽に入れておきました。また、ランチの営業終了後も、やらなくてはならない仕込みもあったので、卸すことが出来ませんでした。
夜の営業も終わり、水槽のふぐの様子を、見に行くと、
堂々たる姿で、水槽の底に、鎮座しており、卸すのは、明日にして、
俎板回りを養生して、今日の仕事を終えました。
明日の月曜日は、定休日ですが、先週、先々週の月曜日同様、ふぐを卸すことになり、前回の記事の最後の件(くだり)にもあるように、“二度あることは三度ある”ことになりました。
この際、天然のとらふぐという自然相手ですので、難しいとは言えども、定休日にふぐを卸すのが、いつまで続くのか、やってみたいし、やってみようと思うのは、自称“富士市でふぐが一番好きな料理人”の性なのか、宿命なのでしょうか?
二週連続の予定外の天然のとらふぐは、佐賀産
ここで一旦、電話を切り、市場の担当者に連絡を取ると、「どうにもこうにも、買い手がつかなくて、困っているので、何とかして欲しいんですけど・・・。」と、頭を下げられたものの、既に休み気分でしたので、逃げ切ろうとは思ってはいたのですが、断りきれずに、仕入れることになり、市場に向かいました。
結局、先週の月曜日同様、予定外とはいえ、天然のとらふぐの仕入れのために、市場に行くことになりました。市場に着くと、案の定、
駐車場には、仕入れきている魚屋さんなどの車は無く、
色んな問屋さんが集まる売場も、既に片付けも終わり、人もまばらでした。そんな光景を尻目に、市場の構内に入り、生簀行くと、
時間こそ、
先週と一時間半程違うとは言え、同じ様にガラ~ンとしており、
空っぽの生簀を尻目に、
辿り着いた先に、自分の仲買人の札が貼られたとらふぐが、泳いでいました。そのまま、ブクブクをセットした発泡スチロールに、
入れ、【佳肴 季凛】に戻りました。定休日でしたので、そのまま水槽に入れ、卸すのは、明日にしたいのは、やまやまでしたが、市場で状態を確認したように、お腹の部分も、
赤くなっていました。ただ、赤くなってはいても、必ずしも、薄く透き通るようなふぐ刺が、そのようになることはありませんが、良い状態だとは、言い切ることは出来ません。このような状態にあると、
尾びれをはじめとするひれも、擦れていたり、
目も”白内障”を患っているような気配です。このような外的所見が見られる以上、水槽に入れておいても、身が痩せるだけでなく、最悪の場合、上がって(=死んで)しまう可能性も高いので、休日という休息の時間を減っても、一刻でも早く、ふぐを卸すことが、自称“富士市で一番ふぐが一番好きな料理人”の使命であるのは、当然のことです。
締めてから、しばらくすると、2本のうち1本から、
このような白い液体が流れてきました。となると・・・、
お腹から出て来たのは、やはり白子で、そのまま卸し終え、2本目を卸し始めると、
これまた、同じ兆候にして、
然るべき白子が、たわわ・・・。この時季の白子が、大きく成長することは、これまでに何度かお話ししたことがありますが、
内臓の主要器官でもある肝臓の大きさを 、片方の生殖腺だけで、凌ぐことです。他の生物だったら、あり得ないことでしょうし、それほどまでに大きく成長するということは、天然のとらふぐという生き物にとっては、白子は、その個体のもつ生命エネルギーを集約したものでもある言っても、過言ではありません。
ですので、その味わいが、濃厚でありながらも、繊細さが、どこまでも残るのは、白子が、天然のとらふぐという美食の極みということを象徴しているとしか、言い様がありません。
結局、この2本の佐賀産の天然とらふぐの白子は、
このようなものでした。
休み返上というのは、今日に限ったことではなく、日常茶飯のことですが、久し振りに“残り物の福”に与ることが出来たのも、本場の下関では“ふく”と呼ばれるのが、改めて分かったような・・・・・。来週の月曜日は、“三度目の正直”なのか、“二度あることは三度ある”のか・・・・・。
いずれにせよ、福が舞い降りれば、それが一番です。
一カ月半振りに、三重県から入荷した天然のとらふぐは、7,0キロのジャンボサイズ
今朝、三重県から、
宅配便で、荷物が届きました。中を開けると、
天然のとらふぐが、1本入っていました。三重県から、天然のとらふぐが入荷したのは、約一カ月半振りのことです。袋から出し、まな板の上に置くと、
その大きさが、想像つくかもしれません。お気付きの方もいるかもしれませんが、自分が卸すとらふぐは、活きたものが、殆どですが、このように締めた状態で入荷したのは、大きすぎて、発泡スチロールで、活かしたまま送ることが出来ないからです。
ただ、締めてしまうと、お腹に餌が入っている場合、その臭いが回ってしまい、活け締めのものでも、刺身にすることが出来ないこともあり、卸すまでは、その可否については、分からないので、このように入荷してくるのは、ある意味ギャンブルでもあります。
さて、このとらふぐの目方は、
7,0キロのジャンボサイズで、去年の今頃も、三重県から、ジャンボサイズのものが入荷しました。ここまで大きいと、ふぐの異名である“鉄砲”というよりも、“大砲”と言ったほうが、いいかもしれません。その時よりは、0,3キロほど小さいのですが、ほぼ同サイズです。ただ、これまでに、自分が仕入れた中で、一番大きかったのは、2月の終わりに、焼津から入荷した7,5キロのものです。
このとらふぐを卸し、お腹から出てきたのは、
真子と呼ばれる卵巣で、猛毒なので、食べることは出来ません。つまり、このとらふぐは、メスでした。自分のこれまでの経験上、4キロを超えるとらふぐで、オスを見たことは、一度もなく、とらふぐに限らず、魚に詳しい人によれば、大きいとらふぐは、メスという定説が出来上がっているようです。
卸し終えると、このとらふぐが入っていた発泡スチロールで、
水洗いをし、
きれいに、布巾で拭いてから、
三枚に卸し、
刺身に出来るように、晒にくるみました。ということは、先ほどお話した懸念は、全く無かったのです。
そのまま、アラの部分と一緒に、
冷蔵庫へ。
これだけ大きいとらふぐ、しかも天然ものになると、まともな刺身に仕立てられるのは、早くても月曜日、理想的には、火曜日か水曜日頃です。大きいからといって、大味ということはなく、むしろ味わいが、深く、特にふぐちりにすると、その違いは、驚くほどです。他の魚に例えるなら、めじ鮪と本鮪の違い、いなだと鰤のそれだと言えば、お分かり頂けると思います。
一度、ジャンボサイズのとらふぐの味を覚えてしまうと、ふぐの魅力に取りつかれてしまうこと、必至です。その最たる例が、自称“富士市でふぐが、一番好きな料理人”の自分なのは、今更語るまでもありません。