蝉魴鮄(セミホウボウ)の味
Vol.4285
いらっしゃいませ
マクロビオティック(玄米菜食)を
基本に据えた
“身体に優しい美味しい日本料理”
を信条とし
天然のとらふぐ、西京漬(西京焼)を
こよなく愛す
【佳肴 季凛】の店主兼熱血料理人の
志村弘信です
今日(2月1日)は

蝉魴鮄(セミホウボウ) の
味について
お話しします
今回のお話しを
初めて読まれる方は
過去3回のブログを
お読み下さい



初めて仕入れた
セミホウボウですので
当然のことながら
味は未体験です
そんな時は
知り合いの三重県の魚屋さんに
訊くことにしています

この後、直接電話をすると
笑いながら
「普通に食べられますよ」
の一点張り
そもそも、こんな事を訊いたのは
ネット上での評価が
様々だったからです
◆低評価
・大して美味しくない
・酸味を感じる
・5段階評価の2
・喜んで食べるほどの味ではない
◆高評価
・味が濃厚
・食感、味共にGOOD
書き込みはあくまでも
書き込みですので
実食してみなければ
始まりません。
ということで
活〆の魚ですので
刺身に仕立てました

どう見ても
ネット上の低評価は
間違いとしか
思えない見た目です
そのまま食べてみると
濃厚な味はありませんが
5段階評価で言うなら
3~4相当
一昨日、つまり締めた翌日に味見し
感想を伝えたやり取り

試食ですので
昼ご飯用に
真鰯(まいわし)と共に
ハーフ&ハーフ丼に仕立てました
こちらが
たたきにした真鰯で

こちらが
セミホウボウの刺身です

既に、何もつけない状態で
食べているので
ここからは

薬味を盛付けました
そのまま=素材を
料理に仕立てるのが
調味料や添える野菜です
セミホウボウには
生の本山葵
真鰯には
生姜を添えてあります

「調味料が
素材を料理に変えるんだぁ~」
と、熱血君
「そうだよ
どんなものでも
そのまま食べてみないと
本来の味が分からないからね」
「味も見ないで
醤油とかかける人を見るけど
そういうのって
どうなの?」
「どうもこうもないよ
見るだけで味が分かるなら
透視能力がある
超能力者だよ
そういう人は」
「そんなわけないじゃん!」
「食べてみて、薄ければ
醤油をかけるのは
ありだけど・・・
まぁ、色んな人がいるからね」
「そうだよねぇ~
で、肝心のセミホウボウの
総合評価は?」
「活かしのもので
それなりの大きさなら
ストライクゾーンに収まるよ」
「わぁ~、それなら
良かったね
でもさぁ
親方の投稿を見て
セミホウボウの人気が出ちゃったら
困るじゃん!」
「ぜ~んぜん
困んないよ
魚の美味しさが知れ渡るなら
大いに結構だしね」
「確かに、そうだよね
狭い了見は良くないよね」
「そういうことだよ」
食べたことがないからこそ
食べてみて
使えるかどうかを判断するのは
料理人として
非常に大事なことです
自分の場合
自ら魚市場に行っている以上
セミホウボウのような魚に
出会えるわけで
そういう魚の良し悪しを伝えることが
魚菜食文化の日本料理を
次世代に伝えることになります
さらに言うと
魚菜食文化を支えてくれるのは
漁師という存在です
彼ら無くして
料理人は料理を作ることが出来ません
だからこそ
漁師をはじめ
一次産業の代弁者として
食材の魅力を
伝え続けなくてはならないのです
「パンジーって
可愛らしいけど
寒さに強いんだね

そんじゃ、また明日」 by ミニふぐちゃん
蝉魴鮄(セミホウボウ)を卸してみた
Vol.4284 (1月31日)

いらっしゃいませ
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基本に据えた
“身体に優しい美味しい日本料理”
を信条とし
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志村弘信です
「いよいよ今日は
セミホウボウを卸す話だね♬」
と、熱血君

「そうだね
初めて仕入れた魚だから
勉強しながら
話しているから
いい勉強になるよ」
「へぇ~
“人は教えることによって学ぶ”
ってやつだね」
「気の利いたこと
知っているじゃん!」
「えへへ・・・♬」
今回から
お読みになる方は
過去2回のブログを
お読み下さい



水洗いしておいた
蝉魴鮄(セミホウボウ)です
三枚に卸すと
このような身をしています

締めてから
一日経っており
薄いピンクをしています
セミホウボウのような
紡錘形の魚は
身(内)から皮(外)に向かって
骨が入っているのが
特徴です
また、紡錘形の魚は
ワニ型の魚とも呼ばれており

ワニとは
いわゆるワニのことです
骨が入っているので
頭の方から
抜いていきます

普通の魚のように
血合い骨そのものを
切り分けないのは
身が少なくなってしまうからです
また、初めて卸す魚なので
骨の形が不明なので
手探りで
抜いていきます
結果的に
骨の先端が二股になっていませんでした
骨を抜き終えた身です

皮を引くと
脂が乗っているのが
わかります

引いた皮を
改めて見ると

鱗(うろこ)というより
鎧(よろい)のような感じです
実際、鱗の役割は
外敵から襲われた時に
身を守るためだけでなく
水の抵抗を減らすためや
海では水分が
出ていかないように
するためでもあります

「鱗と鎧って
似ているんだね。」
出汁を取るため
焼いた皮は
かなり脂が乗っており

締めたのが月曜日で
今日の水曜日で
三日目ですが
予想していたよりも
期待出来そうな身質でした
ということで
明日は
クオリティチェックということで
実食してみます
初めて手にした魚で
ここまで楽しめるのは
自ら魚市場に
通っているからこその特権です
明日が最終回の
蝉魴鮄シリーズに
乞うご期待!
蝉魴鮄(セミホウボウ)を卸す前の下処理
Vol.4283 (1月30日)

いらっしゃいませ
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志村弘信です

「親方、今日のブログは
昨日の続きだね♬」
「そうだよ

締めて
血抜きをしたところまで
話してあるから
ここからだね」
「うん、早く話して~♬」
先ずは 、こちらをお読み下さい

血抜きをしたら
普通の魚と同じように
鱗(うろこ)を取ろうとしたのですが

腹側も
背側も

硬くて取ることが出来ません
これまでに色んな魚を
卸したことがありますが
初めて目にする
鱗の付き方でした
取れないということは
卸す時に身に鱗が付かないことなので
これがこれでOK
セミホウボウのような形の魚は
ワニ型の魚とも呼ばれ

ワニとは、いわゆるワニです
ワニ型の魚の一つが
夏が旬の白身の鯒(コチ)で

一般的な魚と違い

海底で腹ばいになって
生活しています
セミホウボウに限らず
ワニ型の魚は
形が変則なので
骨などの付き方も
変則です
変則と言えば

頭の付根というか
頬の部分には
突起物があります
付いているのには
理由があるのでしょうが・・・
腹を裂いていくと

三角の部分で
左右に包丁を入れます

この部分を使って歩くのですが

脚ではなく
ひれとされています
落とした頭を
色んな角度から
見てみましょう
①上

②横

③前

④斜め前

頭だけを見ると
魚というより
両生類や爬虫類のような
面立ちです
腹わたを抜き
水洗いしたら

針金を通し

残っている血を
抜いておきました
血は内臓と同じものなので
残っていると
生臭くなるからです
内臓と言えば
肝も

胃袋も

普通の魚同様
使えそうな感じで
肝は脂もありました
このまま布巾で包み

冷蔵庫へ。
「話は昨日のことでも
今日はここまでに
しておいてくれるかなぁ~」
「どうして?」
「普段、見ている魚と違うし
今日のブログを
何度か読みなおしてから
卸すところを
知りたいからだよ。」
「そうだね
話す自分も
その方が楽だし・・・」
「明日は卸すんだね
楽しみにしているよ

そんじゃ、また」
初めて仕入れた蝉魴鮄(セミホウボウ)
Vol.4282
いらっしゃいませ
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“身体に優しい美味しい日本料理”
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天然のとらふぐ、西京漬(西京焼)を
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志村弘信です。
今日(1月29日)は

初めて仕入れたセミホウボウ
についてお話しします。
「おはよう、親方
休みだけど
市場に行って来たんだね。
お疲れ様~♬
セミって・・・?」
と、熱血君。

「おはよう

これがセミだよ。

セミって言うから
虫だと思った?」
「この真冬に
そのセミは無いとは
思っていたけど・・・。」
「普通なら
魚市場にセミなんて
考えもつかないだろうしね。」
「そうだよ。
で、この魚は
何て名前なの?」
「蝉魴鮄(せみほうぼう)って
言うんだよ。」
「何だか難しい漢字だねぇ。」
「見ての通り
胸びれが
大きいんだよ。」
「これまでにも
仕入れたことあるの?」
「無いよ。」
「え゛っ!?」
「市場で見たことはあるけどね。
活きたもので
1キロなんて
あんまり見たことないし
肥えていて
興味が湧いたから
仕入れてみたんだよ。」
「味の良し悪しって
聞いたことあるの?」
「無いよ。
名前が似ている魴鮄(ほうぼう)は
何度もあるし
こっちは抜群に美味しいけどね。」
これが、魴鮄(ホウボウ)

「じゃあ、ホウボウに近いとか・・・?」
「それも
わかんない。」
「ないない尽くしじゃん。」
「そうだよ。
たださぁ、折角
市場に行っているんだから
珍しい魚を仕入れて
それを伝えるのも
料理人の役目だと思うんだよね。」
「確かに、そうだよね~。」
「まぁ、そんなことは置いといて
市場にいた時のことから
話すから、いい?」
「わぁ~い♬」
ということで
時計の針を
市場時間に戻します。

今朝、沼津魚市場の
活魚売場に行くと

生簀の中に

セミホウボウがいました。
セミホウボウの産地というか
漁場(ぎょば)は

南伊豆の妻良(めら)の
定置網で水揚げされたものです。
高いのか、安いのかも
全く分からないので
やや高めの値段設定の作戦を
仲買人と立て
競りに臨むことに。

その結果

無事にGET!
「っていう流れで
そのまま活かして
持ってきたんだよ。」
「ふぅ~ん。
で、これから
卸すんでしょ?」
「そうだよ。
今日は休みだから
水洗いまでしておくだけだよ。」

まな板に乗せた
セミホウボウで
ひれを広げてみると
身体の長さと
ほぼ同じです。

ホウボウのひれも大きく
鮮やかな色をしているのが
特徴です

「こんなひれだったら
飛べるんじゃね?」

「それはないけど
だから、セミなんじゃないのかね。」
「セミってことは
賑やかに音を立てるとか?」
「ホウボウは浮袋を使って
ブォーブォーって音を出すよ。
その音が転じて
ホウボウって呼ぶなんて
説もあるからね。」
You Tube より拝借

「へぇ~。
確かに鳴くね!」
「実はさぁ
市場で掴んだ時に
そんな音を出したんだよ。」
「マジで!?」
「これから
締めるから
離れていてね。」
「はぁ~い。」

頭の付根に包丁を入れたら
血抜きのため

氷を入れた海水へ。

「どうして
氷入りなの?」
「締める時に
一気に体温が上がると
身が焼けるからだよ。」
「焼けるって
加熱調理をしないのに・・・?」
「っていうか
身が白濁して
柔らかくなっちゃうんだよ。」
「へぇ~。」
「特に、マグロやカツオみたいな
赤身の魚は
運動量が多いから
ちゃんとしないと
すぐに身が焼けちゃうんだよ。」
「そんなこともあるんだぁ。」
「この後、水洗いまでしておくんだけど
今日は休みたいから
続きは明日にしてもいい?」
「うん♬
妻に良しで
妻良=良妻だから
真由美さんと出掛けて来なよぉ~」
ちなみに、真由美さんとは
女将兼愛妻(!?)のことです。
そんなわけで、今日のお昼は
沼津市内にある居酒屋【きえい】さんに
行って来ました。

「仲良し子吉で
いいねぇ~。

じゃ、明日は
卸す様子を話してくれるんだね。」
さらなる時化ながらも、救いの神の(さわら)
Vol.4279
いらっしゃいませ
マクロビオティック(玄米菜食)を
基本に据えた
“身体に優しい美味しい日本料理”
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天然のとらふぐ、西京漬(西京焼)を
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【佳肴 季凛】の店主兼熱血料理人の
志村弘信です。
今日(1月26日)は

さらなる時化の隙間を
かいくぐって入荷した
鰆について
お話しします。
今朝の沼津魚市場は

予想はしていたとは言え

ガラ~ン。

太平洋側がダメでも
日本海はOKだったりするのですが
ここまでの状況は
台風の時季でも
なかなかありません。
ただただ、昨日の時点で
“水揚げさえあれば・・・”的な
注文というか
相談をしておいた問屋の売場に行くと

わずかに積まれたスチロールがあり

その奥に

三重県熊野産の鰆(さわら)が
入荷していました。

「季凛さん
鰆が来ているよ。」
と、売場の担当者。
「あんな状況だから
あえて電話しなかったけど
あって良かったよ。」
あえて訊かなかったのですが
スチロールに
キリンと書いたのは
荷主のよう気がしました。

というのも
1,7キロという小さい鰆は
殆どの場合
2、3本を一つにして
入荷して来るだけでなく
1本入りの場合
割高になることを承知上での
特注のため
荷物が紛れないようにしたからです。
また、昨日の時点で
“あれば”的な注文をしておいたのは
昨日も入荷があったからでした。
無いながらも
魚市場に来たことが
功を奏し
その日の魚を仕入れるだけが
魚市場に来る目的ではないのです。
こんな状況の魚市場でしたので
仕入れを終え
戻ると

夜明け前の6時過ぎ。

寒さと眠さのWパンチで
とりあえず、仮眠を取ることにしました。

鰆を見ると

熱血君が
「おはよう、親方
とりあえず、仕入れたい魚があって
良かったじゃん。
救いの神だね!」
と、話しかけてきました。
「おはよう
無くても、どうにかなるけど
あって良かったよ。」
「今朝のサワラは
時々仕入れるものよりも
ずっと小さいけど・・・。」
「時々仕入れるのは
コース料理の西京焼用だけど
今朝のは
刺身用だから
あえて小さい鰆にしたんだよ。」
「そうなんだぁ~。」
「余分な話だけど
小さい鰆のことって
何て呼ぶか知ってる?」
「sawaraじゃね。」
「それって
小文字しかも
ローマ字表記じゃん!(笑)」
「冴えているかと
思ったけど、ハズレ?」
「ハズレだね、残念だけど。
さごしって呼ぶんだよ。」
「どう意味なの?」
「狭(さ)腰(こし)
要は狭い腰周りが転じて
さごし、さごちとも呼ぶんだよ。」
「へぇ~。
じゃあ、サワラは?」
「狭(さ)腹(はら)で、さわら。」
「意味としては
サゴシもサワラも
同じじゃん。
でも、サハラ砂漠は
広いけど。(笑)」
「ぜ~んぜん、違うけど。
もっと言うと
サハラ砂漠のサハラは
砂漠を意味するんだって。」
「砂漠砂漠?
変な四文字熟語じゃん!(笑)」
水洗いまで終えた鰆は

片身だけ卸し

骨付の身の方は

尾の部分と切り分けました。
というのも
先端の方は筋っぽいので
刺身には、不向きだからです。
骨付の身は
このまま
氷詰めにしておくので

中骨の部分に
針金を通し

血抜きをしておきました。
さらに
尾の部分を下向きにし

血を抜きます。

「どうして、こんなことするの?」
「血は内臓みたいなものだから
残っていると
生臭みだけじゃなく
鮮度が落ちやすくなるからだよ。」
「ここまでするんだぁ。」
「そうだよ。
命ある魚だよ。
出来るだけ
丁寧に扱って
美味しく食べてもらいたいからね。」
「ふぅ~ん。」
粘膜や余分な水分を取り除いたら
キッチンペーパーに包み
弱めの真空パックをしたら

氷詰めして、冷蔵庫へ。

「こういう風にすると
持ちが違うの?」
「そりゃ、違うよ。
凍るまいって根性が
頑張るからね。」
「マジな話なの、それって?」
「そうだよ。
ちゃんとした
科学的な根拠だよ。」
「へぇ~。」
「凍らない0度だから
水分が行き渡って
例の根性で
細胞内の不凍物質を作るからだよ。
普通に冷蔵した場合の
2~3倍は持ちが良くなるよ。」
「すげぇ~。」
「良いものをより美味しく
漁師が獲ってくれたものを
大事にしてこその料理人だよ。
ましてや、この時化だもん
粗末に扱えないからね。」
「そうだね。」
卸し身の方は
背と腹の部分に柵取りしたら
皮に包丁目を入れ
氷に乗せたら

バーナーでFIRE

すぐにひっくり返し
粗熱が取れたら

水気をふき取り
冷蔵庫へ。
全国的な大時化ながらも
昨日の鯵といい
今日の鰆といい
無事に仕入れをクリア出来ました。
その労をねぎらい
昼ご飯は

鰆と

鯵で

ハーフ&ハーフ丼を仕立てました。

「親方はてんこ盛りの丼だけど

真由美さんは
食べ過ぎちゃうから
別盛なんだよねぇ~。」
ちなみに、真由美さんとは
女将兼愛妻(!?)のことです。
SNSで繋がっている
全国各地の漁師や魚屋さんも
この時化には
かなり悩まされたようですが
天気予報によれば
週明けには
風も収まるとのこと。
魚市場らしい状況を
期待するばかりでなりません。
「明日は

お弁当あり

法事あり

バスありなんだ~
頑張ってね。」 byミニふぐちゃん
時化の時に、救いの神的な鮮度バリバリの鯵(あじ)
Vol.4278
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志村弘信です。

今日(1月25日)は
時化の時に入荷した鯵(あじ)
についてお話しします。
今朝の沼津魚市場の
伊豆近郊や

地物が並ぶ売場は

ガラ~ンとしていました。

また、活魚売場の生簀には
三陸産の平目(ひらめ)が少々。

手前には
地物がごくわずか・・・。

それでも
全国各地からの
陸送便の魚が並ぶ売場は
普段の半分弱とは言え
魚が並んでいました。

とは言え
自分好みの魚はありません。
別棟の売場も
案の定、ガラ~ン。

それでも
こちらの売場も
先程同様
少しばかり・・・。

とは言え、これまた
好みの魚無し。
さらに
こちらの売場も
ガラ~ン。

このような状況でも
困らないようにストックはしていますが
早朝のドライブで終わるのは
よろしくありません。
そんなことを覚悟しながら
最初の売場に戻ると

東伊豆の定置網で水揚げされた魚の
仕分けをしている最中でした。
第一ステージをクリアし
第二ステージになり

仕事の邪魔にならないように

鯵(あじ)を選り

秤にかけてもらいました。
骨折り損の何とかにならず
ひと安心。
東伊豆と沼津は距離がありますが
水揚げされてから
2、3時間程度なので

死後硬直しておらず
身はクニャ~と曲がります。
その後、氷入りの海水に入れ
持ち帰ると

ふぐとらちゃんがやって来ました。
「おはよう、親方
今朝の仕入れは
これだけ?」

「そうだよ。
今朝の市場の様子を
見てごらん」
「グェっ
ぜ~んぜん無いじゃん!」
「そうだよ。
全国的に時化ているから
あんな有様。
半泣きだよ」
「あんな感じじゃ
明日も無さそう?」
「多分というか
95%以上の確率で無し!」
「あちゃ~
どうするつもり?」
「最悪、無くても
アレで冷凍したものがあるから
平気だけど
荷受(にうけ)の問屋に
相談しておいたから
もしかすると・・・。」
「もしかしてくれるよう
僕達も祈っているよ。」
その後

鯵は下処理をしておきました。

鮮度バリバリなので
身が盛り上がっています。
三枚に卸した鯵を見ると

ふぐとらちゃんが
「このアジは、何にするの?」
と、訊いてきました。

「〆鯵にするんだけど
今日は仕込まないよ。」
「どうしてなの?」
「そのまま刺身で使うには
いいんだけど
鮮度バリバリの時に
塩をすると
水分が多く出るからだよ。
明後日の土曜日に合わせて
使いたいからね。」
「そこまで考えているの?」
「一応ね。
『気分で仕込む。』とか言うとでも
思っていたんじゃないの?」
「まぁ、そのぉ
・・・・・。」
焼いてから
出汁を取る頭と中骨は
下処理をしただけで
冷蔵庫へ。

「焼かないのも
鮮度と関係あるの?」

「正解!
鯵みたいな小魚だから
弾けるようなことはないけど
今日は焼かないよ。」
「弾けるって
こんな感じ?」
「そんなわけないじゃん。
身が割れちゃったり
ボロボロになることだよ。」
「へぇ~
新しいと
そうなるんだぁ。」
「あらみたいなものでも
粗末には出来ないよ。
命あるものだから
最後まで
使い切らないとね。
それだけじゃなく
こんな時化の時でも
操業してくれる漁師のことを思えば
粗末にするなんて
罰当たりだよ。
よく言っているけど
一次産業が無ければ
飢え死にしちゃうんだから
その辺のことを
みんな考えないとね。」
「そうだよ、そうだよ。」
とりあえず
今日の仕入れは、問題無しでしたが
休市日前の明日は
ラストチャンス。
明日も救いの神が
降りて来ますように・・・。
「シクラメンの赤がいいねぇ~。

そんじゃ、また明日」 by 熱血君
休市日前の定休日に仕入れた鰆(さわら)
Vol.4268
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今日(1月15日)は

休市日前の定休日に
仕入れた鰆
についてお話しします。
明日は、沼津魚市場が休みなので
今朝は仕入れに行って来ました。
風が吹く今の時季は
魚の入荷が不安定で
少しでも早く着き
良さげな魚を選りたいので

今朝、着いたのは
4時半でした。

少ないながらも

そこそこ入荷はあったものの

自分好みの魚は全くなし。
気を揉みながら
別棟の売場へ行くと

三重県熊野産の鰆(さわら) が
入荷していました。

“捨てる神あれば 拾う神あり”とは
まさに、このこと。
2本のうち

1本だけ秤にかけてもらい

無事にGET!
魚市場での仕入れを終えたら

食遊市場へ立ち寄り
野菜などを仕入れました。

シャッターが降りているのは
基本的に
開店時間が6時だからです。
『佳肴 季凛』に戻ると
ふぐとらちゃんがやって来て

「おはよう、親方
休みなのに、大変だね。
で、今朝仕入れて来たのは

サワラと

しじみだけ?」
と、声を掛けてきました。
「おはよう
明日は市場が休みだからね。
だけって言っても
鰆は刺身用だから
無いと困るんだよ。」
「でも、もし無かったら
どうしたの?」
「真空パックして
冷凍してある魚があるから
問題ないよ。
しかも、アレで冷凍してあるからね。」
「あ~っ、そっか~
アレがあるからね。」
アレとは
ここではお話ししませんが
気になる方は
ご来店された時に
お尋ね下さい。

水洗いした鰆をしまおうとすると

「明日卸すのは分かるんだけど
もしかして
今日の仕込みは
これだけ?」
と、ふぐとらちゃん。
「そうだよ。
季凛的はたらき方改革にして
2024年問題の絡みもあるから
それに慣れておかないとね。(笑)」
「っていうか
親方無しの子分無しの独り仕事だから
ぜ~んぜん関係無いと
思うけど・・・。」
「あはは、バレたか・・・。」
身と頭も一緒にし

蜆も冷蔵庫へしまい
休日出勤が終了。

「終了はいいんだけど
包丁を砥いでないよ・・・。」

「使った出刃包丁は
ステンレスのだから
きれいに洗っておけば
錆びることはないからね。」
「こっちこそ、2024年問題&
はたらき方改革の産物?」
「んなわけないじゃん。
ステンの包丁は
大きかったり
硬い骨を叩く時のためのものだよ。」
「へぇ~
どっちにしても
お疲れ様でした。」
「ってことで
お疲れさんね。」
なお、来週の月曜日(22日)は
ランチのみですが
営業します。
定休日でも
予め、お申し付け下されば
可能な限り
対応させて頂きますので
お気軽にお問い合わせ下さい。
「今夜はおでんなんだぁ~
んまそぉ

そんじゃ、また」 by 熱血君
川がきれいになると、海の魚が減るのか?
Vol.4264
いらっしゃいませ
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“身体に優しい美味しい日本料理”
を信条とし
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こよなく愛す
【佳肴 季凛】の店主兼熱血料理人の
志村弘信です。
今日(1月11日)は

魚が少なくなった理由
についてお話しします。
今朝、沼津魚市場から帰って来ると
ふぐとらちゃんがやって来ました。
「おはよう、親方
ガッツリ仕入れて来たね~。

マイワシに

トラフグとスズキじゃん。
ってことは
魚そのものが多かったの?」
「おはよう
そんなことないよ。

地物は、ほぼほぼ無し。


入船状況を書いたホワイトボードを見れば
分かるけど

巻網船(まきあみせん)も

東伊豆2か所の定置網も
水揚げ無しだったよ。」
山下丸というのは
東伊豆でも
河津、稲取で操業しています。
網代(あじろ)は
熱海市の地名です。

「神奈川・佐島ってあるけど
これは?」
「佐島(さじま)は
鱸(すずき)の産地。

三浦半島の相模湾に面しているんだけど
蛸(たこ)が有名で
色んな魚が獲れるよ。」
「へぇ~。」
「佐島に近いところだと
長井(ながい)も有名だよ。」
「かなりマニアックなんだけど・・・。」
「そうかなぁ。
関東近郊で
魚を扱っていれば
素通り出来ない地名だよ。」
「・・・・・。」
「反対側の東京湾に面している所だと
松輪(まつわ)、鴨居(かもい)
久里浜(くりはま)、走水(はしりみず)とか
良く知られているね。
松輪の鯖(さば)なんて
かなりの上物(じょうもの)なんだよ。」
「地元民じゃなきゃ
知らないようなとこじゃん。」
「そうかもしれないけど
東京の鮨屋にいた頃
築地に通っていたから
さっきの産地の魚は
よく入荷していたよ。
今でも、豊洲には
入荷があるからね。」
「あぁ~、こんだけ漁港があるから
昔から江戸前で
色んな魚が獲れたんだぁ。」
「そうなんだよ。
東京湾には
多摩川、隅田川、荒川、江戸川
っていう大きな川が
流れ込んでいるんだけど
その水の中に
プランクトンがいるから
魚が育つんだよ。」
「変な話
生活排水って
悪者じゃないってこと?」
「ある程度の汚れが
魚を育てるらしいんだよ。
明らかに有毒なものは
別だろうけどね。
“水清ければ魚(うお)棲まず”って
聞いたことない?」
「あるある!」
「元々、紀元前の中国の孔子の時代から
言われている言葉だけど
意味はともかく
そんな昔から
言われているってことは
間違っていないんじゃないのかなぁ。」
「ってことは
魚が少なくなったのは
水がきれいになったことが
原因なの?」
「当たらずとも、当からず
って感じかなぁ。
護岸整備すれば
微生物が減って
餌が無くなるから
魚が育たないんだよ。
獲り過ぎとか
海水温の上昇も原因の一つだろうけど
護岸整備なんてものには
利権=政治家が絡むから
それを認めるような事は
隠したいわけよ。」
「それって、変じゃね。」
「変だよ。
何でも隠そうとするから
良くないわけ。
最近の裏金なんかも
一番の例じゃん。」
「そうだったの!?」
「ふっふっふ、多分ね。
必要悪よりも
性質(たち)の悪い巨悪の方が
厄介なんだよ。
それらこそ、流して
捨てた方がいいんだよ。」
「その不敵な笑いって・・・?」
「自分は学者じゃないし
あくまでも仮説っていうか
想像っていうか・・・。
まぁ、あんまり変なこと言ってると
魚だけじゃなく
料理の美味しさが激減するから
やめるけどね。」
「そだね、それがいいよ。」
ということで
3種類の魚については
◆真鰯(まいわし) 宮城産

いつものように

【鰯の丸煮】用です。



普段、仕上がるのは
翌日ですが
明日はバスツアーのお客様も見えるので
仕上がるのは
明後日です。
◆とらふぐ 宮城産


◆鱸(すずき) 神奈川・佐島産


無事に魚の仕込みが終わりましたが
これまでにもお話ししているように
料理人は
漁師、農家などの
一次産業の代弁者でなくてはなりません。
特に、ホームグランドの沼津魚市場は
漁港が併設されているので
リアルの現場を
見聞きすることが出来るのです。
そのためにも
魚市場という生の現場に通い
魚菜食文化の日本料理の魅力を
伝え続けます。
「明日は、クラブツーリズムの
豪華バスが来るんだね。

そんじゃ、また」 by 熱血君
時化ながらも、黒鯛(くろだい)GET
Vol.4261(1月8日)

いらっしゃいませ
基本に据えた
“身体に優しい美味しい日本料理”
を信条とし
天然のとらふぐ、西京漬(西京焼)を
こよなく愛す
【佳肴 季凛】の店主兼熱血料理人の
志村弘信です。
今回は
時化ながらも
仕入れることが出来た黒鯛
についてお話しします。
今朝の沼津魚市場は

こっちも

そっちも

あっちも

どっちも

ガラ~ン。
それこそ
人>魚状態
それでも
送りと呼ばれる
陸送便の魚の売場には
普段の半分程度の魚が
入荷していました。

一番の原因は、時化で
二番目の原因は、暦です。
時化=自然と
暦=人為の合わせ技で
こうなると、お手上げです。
別棟の売場は
送りの荷がメインなので

それでも

いくらか

入荷あり。
それでも
少ない活魚売場には

自分の守備範囲的な魚の
黒鯛(くろだい)が入荷しており

何枚かあるうちの中から

1,6キロのものを
仕入れることが出来
ひと安心。
その場で締めてから

持ち帰ることにしました。

『佳肴 季凛』に戻ると

「おはよう、親方
市場へ行ったみたいだけど
今日は定休日だよね?」
と、熱血君。
「おはよう
そうだよ。
時化ているのは
分かっていたから
休み明けの明日の魚に困るから
行って来たんだよ。」
「そうなんだぁ~。
でも、このクロダイがあったから
良かったじゃん。」
「スレスレのギリギリで
助かったよ。」
「で、他の仕入れは?」
「無いよ。
とりあえず、卸せば
休日出勤が終わりだから
どんどんやるよ。」
鱗(うろこ)を取り

頭を落としたら

三枚に卸し

頭などのあらも

焼いてから出汁を取るため
下処理をしておき
今日、唯一の仕入れと仕込みが
終了しました。

「お疲れ様~♬」
「お疲れさん。」
最後に、包丁を砥ぎ
チョイチョイの休日出勤が
終わりました。

今朝、市場に行った様子だと
明日も少ないような感じですが
正月休みの後の三連休明け
ということもあり
淡い期待を持ちつつ
明日も、市場へ行って来ます。
「明日は、何を仕入れてくるのかなぁ。

そんじゃ、また」 by ミニふぐちゃん
鮮度抜群の朝獲れ鯵(あじ)は、東伊豆産
Vol.4260(1月7日)

いらっしゃいませ
基本に据えた
“身体に優しい美味しい日本料理”
を信条とし
天然のとらふぐ、西京漬(西京焼)を
こよなく愛す
【佳肴 季凛】の店主兼熱血料理人の
志村弘信です。
今回は
東伊豆産の朝獲れ鯵
についてお話しします。

「おはよう、親方
定休日前だし
お弁当の注文もあるのに
仕入れをして来たんだ~。」
と、ふぐとらちゃん。
「おはよう
最初は冷凍ものだけの
予定だったんだけど
東伊豆の定置網の鯵が
良かったから
仕入れて来たんだよ。」
「そうなんだぁ~。
折角だから
アジのことを話してよ。」
「その前に
お弁当を仕上げるから
その後でね。」
「はぁ~い♬」
その後、お弁当を仕上げると

「んまそう~
早くアジのことを
話してよ。」

「はいよ~。」
ということで、時計の針を
市場時間に戻します。

今朝、沼津魚市場に着くと
東伊豆の定置網漁で水揚げされた
魚の仕分けをしているところでした。

反対側から見ると
こんな感じです。

群れで泳いでいるので
鯵が殆どです。

大きさによって
仕分けていくのですが
6人掛かりですので
この量なら
20分もあれば
終わってしまいます。
台の下にも
鯵、あじ、アジ!

水揚げされてから
数時間足らずなので

死後硬直もしていません。
この中から
自分好みのサイズを選っていると

天から

鯵のシャワー。

秤にかけてもらうと
「目方をちょうどに合わせて欲しい」
とのことで

追加をして

2,0キロ。

山下丸というのは
操業した漁船のことです。
「って感じで
仕入れて来たんだよ。」
と、言うと

「さっきはクニャ~
ってしてたけど
もう硬直しているんだね。」

「小魚だから
どうしても早くなるよね。」
「そうなんだぁ~。」
鱗(うろこ)と

ぜいごを取ったら

反対側の身も

同じようにしたら

頭を落とし

はらわたを抜きます。

また、焼いてから出汁を取るため

頭も半分に
包丁しておきました。

水洗いし

このままでは
鮮度の良し悪しは分かりませんが
よく見ると

鮮度抜群のものは
切り口から
身が盛り上がっています。

三枚に卸したら
休み前なので
今日の出番はなく
予定通り
急な御予約などに備えて
真空パックして
冷凍庫へ。


また、頭と中骨は
あえて、今日は焼きませんでした。

「ねぇ、どうして
焼かないの?」
「鮮度が良いと
身が活きているから
弾けちゃうことがあるからだよ。
小魚だから
そんなに旨味とか熟成は
関係ないけどね。」
「へぇ~。」
なので、予定通り
急な御予約などに備えて
真空パックして
冷凍庫へ。

とは言っても
クオリティチェックは欠かせないので

鯵のたたきにして

お弁当の余りものと共に

昼ご飯行きでした。

「 煮物、焼物、刺身、汁物が
揃っているなんて
完璧な和食膳じゃん」
「そうだね。
安定の美味しさだよ。」
冬場は時化のため
入荷、水揚げが減り
気を揉むこともしばしばですが
今日のような
仕入れと仕込みで
凌ぎたいものです。
「明日は定休日だね。

そんじゃ、また」 by 熱血君